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民主主義の理想の形

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』(2022/105分/アメリカ)監督サラ・ポーリー 出演ルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリー、ベン・ウィショー、フランシス・マクドーマンド

実話を基にした、自らの尊厳を守るために語り合った女性たちの感動の物語
2010 年、自給自足で生活するキリスト教一派の村で起きた連続レイプ事件。 これまで女性たちはそれを「悪魔の仕業」「作り話」である、 と男性たちによって否定されていたが、 ある日それが実際に犯罪だったことが明らかになる。 タイムリミットは男性たちが街へと出かけている2日間。 緊迫感のなか、尊厳を奪われた彼女たちは自らの未来を懸けた話し合いを行う―。

これが2000年代にあった実際の事件をもとにしている映画だというのが驚き。現在も閉鎖的なところではこのようなしきたりがあるのか?薬を使って女性を眠らせレイプする。あれっ?これは日本でもあったような。総理側近の記者だったとか。そういう話ではない(本当か?)。村中でそういうことが秘密裏に行われてて、女性たちが「朝まで生テレビ」のような議論をして(これも日本のようだけど、あっちは意見がまとまった。映画だからな)村から女たちが出ていくという単純なストーリー。

これが話題なのは民主主義の初期の理想を思い出させてくるからだろうか?たぶん、日本ではこのようにはまとまらないだろう。そもそもそんなことを考える女性たちがいるか?というのも問題なのだが。

無論保守的な女性もいないわけではない。それがフランシス・マクドーマンドという怖そうなゴットマザータイプの女性だった。そして、この映画を原作を読んで映画化しようとしたのもフランシス・マクドーマンドだった。あえて反対の立場の女性を演じていたのだ。

映画の面白さは「朝まで生テレビ」ならぬ村の討論会にあるのだが、侃々諤々の議論がありながらまとまっていくことの面白さ(面白いと思うのだがわからないところもあった)。そこにアカデミー脚本賞(脚色賞受賞だった。脚色が上手かったのはよく分かる)ということになったのだろう。会話劇なんだが、見所は最初の投票シーンとラストの逃亡シーンなのだが、この経過の会話劇こそがこの映画の核になるところだろう。

唯一男として参加している書紀係の存在も面白く、不思議というか魅力的な存在になっていたり(彼はマッチョな男の反対にいる男だ)。

その過程があってラストのシーンなのだ。そこの盛り上げ方(音楽とか別離のシーンとか)も演出が上手いのか、涙ぐんでしまうのだ。号泣映画ではないが、民主主義とは何かを問うアメリカで制作された映画だった。


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