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これは凄い音楽ドキュメンタリー映画

『サマー・オブ・ソウル』(アメリカ/2021)監督アミール・”クエストラブ”・トンプソン 出演スティーヴィー・ワンダー/ B.B.キング/ ザ・フィフス・ディメンション/ ステイプル・シンガーズ/ マヘリア・ジャクソン

解説/あらすじ
1969年、あのウッドストックと同じ夏、NYで30万人を集めたもう一つの大規模フェスがありました。若きスティーヴィー・ワンダーやB.B.キング、ゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンとメイヴィス・ステイプルズ、当時人気絶頂のスライ&ザ・ファミリー・ストーンなど、全米ヒットチャートを席巻していたブラック・ミュージックのスターが集結した幻の音楽フェス“ハーレム・カルチュラル・フェスティバル”。しかし、その存在は50年間封印されていました…いまこの瞬間まで。

凄いドキュメンタリーが今まで封印されていた。観客は黒人ばかり。警察じゃなく、ブラック・パンサーが警備をしていたり、公民権運動の中で指導者が次々に暗殺された60年代後半、それまでアメリカは黒人の暴動が起きたりで、黒人の立場が揺らいでいる時に彼らに勇気を与える黒人の為のフェスティバルだった。

解説は面白く興味深いのだが演奏途中に入るので、もっと演奏をちゃんと見せて欲しかったというのはある。でもその当時の話とか当時を回想するアーティストのインタビューは興味深く面白い。最初に有名大学へ入学した黒人の女子大生に対する嫌がらせとか酷い。彼女だけ女子で寮の1階で、2階にいる白人女子大生が床を踏みつけて嫌がらせをしていたとか。その時にニーナ・シモンの歌を聞いて励まされたという。黒人たちの音楽に対する思いは熱いものがあるのだ。ポップスにしても乗り越えなければいけない壁があった。

一番凄いと思ったのはマヘリア・ジャクソンで『真夏の夜のジャズ』の10倍は凄かった。キング牧師が前年暗殺されたこともあり、この日は体調も良くないと。同じゴスペル歌手のメイヴィス・ステイプルズに引っ張られて圧倒していた。恐るべきゴスペルだった。憑依するという感じ。何かが降りてくるのは、アレサの時もそうだったがそれ以上に感じた。「ゴスペルの女王」は名ばかりではない。

スティービー・ワンダーは相変わらず天才ぶりを発揮してドラムを叩いていた。ニーナ・シモンは最後だったので、それまでのミュージシャンが凄かったから期待値が上がりすぎてしまった。ただ凄いアジテーションだった。まあ、今の日本でここまで政治的な発言をするアーティストはいないだろう。それをラップのように音楽に乗せてアジる。ああ、ラップの走りなんだな。

マックス・ローチとアービー・リンカーンのジャズも良かったがポップス勢に押されぎみだった。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの観客の乗せ方の上手さとか、観客一体感のフェスティバルの凄さはウッドストック以上かもしれない。

ただ規模の大きさは限られたハーレムの中でということなのだが、無料で大人から子供まで家族連れでピクニックのように黒人たちが音楽を楽しむ。当時のNY市長の力添えもあったという。照明が取り付けられないので太陽が照明となるように舞台設定されたり、手作りのフェスティバルの良さがそのまま観客にもミュージシャンにも伝わって素晴らしいライブになっているのだ。


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