王朝幻想の和歌の世界
『日本の古典をよむ(5) 古今和歌集 新古今和歌集』(翻訳)小沢 正夫 , 松田 成穂 , 峯村 文人
返却期限が来ているので、感想。この本は丁寧に解説されていて分かりやすい入門書。中学生・高校生にもいいと思う。むしろその時代にめぐり会いたかった本かもしれない。『古今集』も『新古今』も季節から始まるので入りやすい。『古今集』は『百人一首』や『伊勢物語』で馴染みある歌が多かった。『新古今集』は後鳥羽上皇のプロデュースということで上皇好みなのかな。塚原邦雄『花月五百年 新古今天才論』のサブ・テキストとして。
『新古今集』の「春上」の並びは、王朝栄華の桃源郷を描き出したというのは、塚本邦雄の説。それは『古今集』に倣い勅撰集として、最期を飾るべき王朝和歌の姿であったという。
『古今集』の「春歌上」も立春の年明けや雪解けの山から桜の開花まで。桜は「春歌下」で満開となり散っていく桜を最後に夏に移るいく。
また『源氏物語』は「古今集」から引歌として影響を受けながら「新古今集」に影響を与えたとあり、日本の文学の根本には和歌があったのだと思った。
『古今集』には紀貫之や在原業平らの六歌仙の有名な歌が印象深い。
「かきつばた」の「折句」の技法。五七五七七の冒頭に「か・き・つ・ば・た」の文字を入れていく。
恋歌の小野小町と伊勢(この人は『源氏物語』で取り上げられていた)の女歌。
『新古今集』だと式子内親王と和泉式部。藤原俊成女(としなりのむすめ)後鳥羽上皇が贔屓にした宮内卿。藤原俊成女は藤原俊成の実の娘ではないのだが歌が優れているので養女となった人。塚本邦雄も一目置いていた。
後鳥羽上皇は父の藤原俊成には全幅の信頼を寄せているのだが息子の定家とは反目していた様子。仮名序は定家ではなく信頼を寄せた良経に書かせた。『古今集』(こちらは有名な紀貫之の仮名序)『新古今集』とも仮名序に勅撰集の意義と方針が読める。才能を認めながらも気に食わなかったのは政治的なことなのだろう。塚本邦雄も政治的な西行法師よりも慈円の方に趣を認めた(鎌倉嫌い?)。
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