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死刑廃止を願う死刑執行人

『死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男 』安達正勝(集英社新書 – 2003)

フランス革命もう一人の主役!!小説を超えた驚きの連続!
敬虔なカトリック教徒であり、国王を崇敬し、王妃を敬愛していたシャルル─アンリ・サンソン。彼は、代々にわたってパリの死刑執行人を務めたサンソン家四代目の当主であった。そして、サンソンが歴史に名を残すことになったのは、他ならぬその国王と王妃を処刑したことによってだった。 本書は、差別と闘いながらも、処刑において人道的配慮を心がけ、死刑の是非を自問しつつ、フランス革命という世界史的激動の時代を生きた男の数奇な生涯を描くものであり、当時の処刑の実際からギロチンの発明まで、驚くべきエピソードの連続は、まさにフランス革命の裏面史といえる。

同じ著者の『物語 フランス革命』を読んで、死刑執行人サンソンのことを知った。死刑執行人というと冷酷無慈悲の殺し屋というイメージだったが、死刑囚とのエピソードは興味深い。元はフランス国王から委任された死刑執行人が革命の為とはいえ、かつての王(ルイ16世)を処刑しなければならない心情。

日本でも漫画『モリのアサガオ』で死刑囚に向き合う看守を通して死刑制度について考えさせられたが、この本も真摯に死刑囚と向き合うから国家が殺人を肯定する死刑制度を考える契機となればと思う。世界で死刑制度が存続している国は少数国で、オウム真理教実行犯が一気に13人も処刑されたことは記憶に新しい。

死刑制度が犯罪抑止にならないことは、相模原障害者施設殺傷事件で犯人が自ら死ぬことを望んでいたこともあるように、どうせ死刑になるから重罪を起こしてやろうとする者も出てくるのである。

『サンソン家回想録』でサンソンも死刑制度の問題点として、人名尊重、時代の変化による刑の重さ(戦時中は死刑が多くなる)、誤審、更生のチャンスを奪う、死刑執行人の負担の重さなどを上げて、死刑廃止を訴えていた。当事者でなければ死刑制度の是非は考えないと思うが、死刑制度は被害者の仇討ちの側面が強く実際に事件の解明のないまま死刑になることも多い。

またそうした問題提起もあるのだが、読み物としても面白い。ギロチンが一日に大量の死刑をするために活躍?したとか。実際に斬首の場合は一日に一人ぐらいしか出来ないそうだ。

また革命時には死刑になることが当たり前のように死刑囚も観念してしまい、それが大量死刑の方向に向かってしまった。諦めの悪い人がいれば、それがいかに残酷なことなのか(なかなか殺せないから凄惨な死刑現場になる)。

ギロチンができるまでは八つ裂き刑とか見世物としてあったという。フランス人がギロチンでは見世物と考えているけど、日本の切腹は見るに耐えない残虐行為と感じるとか。そういう慣れが死刑に対する感覚を失ってしまうのだ。

ある貴族を斬首するのに立ったまま見事にやったという話もあるのだが、斬首に失敗して後々後悔が残ったとか。フランス革命時に素人が助手をやって、死刑を執行した後に、その助手もショック死してしまった話とか、執行する方もあとあとトラウマが残るものなのだ。



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