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1月のベスト本

1月のまとめ

いつも書き捨てなので、反省やこれからのことを考えて、1月読書のまとめをやりたいと思います。主に読書は読書メーターで記録を続けているので、それを土台にしてします。

今月のベスト5

noteのいいねが一番多かったのは、『樋口一葉 (明治の文学)』樋口 一葉 , 坪内 祐三 (編集), 中野 翠 (編集)

今月の読書テーマの「太宰治」では、太宰作品ではないですが太宰理解が深まる檀一雄『小説 太宰治』

頑張って書いたのは、『わが戦後俳句史 』金子兜太(岩波新書)

一番面白かった読書は、高橋康也『サミュエル・ベケット』

韓国の現代文学は、まだまだあった。『モンスーン』ピョン・ヘヨン , 姜 信子 (翻訳)

1月のテーマ読書「太宰治月間」

2月のテーマ発表

とりあえずプルースト『失われた時を求めて』を読んでいるのでそれにしようかと思いましたが、完読するまでには今年いっぱいかかりそうなので、ここは大きく構えてフランス文学とします。好きな作家だけです。

2022年1月の読書メーター


読んだ本の数:48冊
読んだページ数:6661ページ
ナイス数:940ナイス

https://bookmeter.com/users/56191/summary/monthly/2022/1
■P+D BOOKS 小説 太宰治
檀一雄と太宰治の友情青春物語。『走れメロス』は熱海の旅館に入り浸って酒や女遊びをしていた太宰を迎えに行ったが、ミイラ取りミイラになったように檀一雄も一緒に遊んで金がなくなり、太宰が檀一雄を人質として旅館に置いって行ったが帰ってこなかった実話エピソードが面白い。檀一雄のことなどほったらかしで、井伏鱒二と将棋を指していたのだ。太宰のフィクションは懺悔と共にそう有りたいという思う自分自身なんだよな。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nac9dcdde97f5
読了日:01月31日 著者:檀一雄
https://bookmeter.com/books/14019341

■失われた時を求めて〈2 第2篇〉花咲く乙女たちのかげに 1 (ちくま文庫)
ちょっと頓挫したのでドゥルーズ『プルーストとシーニュ』を燃料投下。昔読んでいたのだがすっかり忘れていた。欲望機械ということです。過去の回想ではなく、未来を欲望していく文学機械というのが、無意識的過去の回想物語というのとは違った視点。開かられた文学。創造的進化。読書機械という状態でどんどん読む本を広げてしまう。不完全燃焼ばかり。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n089ddebb120e
読了日:01月31日 著者:マルセル プルースト
https://bookmeter.com/books/485109

■昭和元禄落語心中(3) (KCx)
このまま最後まで読むか悩むな。その時間他の本を読めなくなるから。もうだいたいのストーリーは読めた感じ。ライバル物語であり、友情物語であり、恋愛物語であり、芸の物語。広げ過ぎか。芸の物語の部分が一番気になるのだが。落語「居残り佐平次」。
読了日:01月30日 著者:雲田 はるこ
https://bookmeter.com/books/5441974

■昭和元禄落語心中(2) (KCx)
戦時で落語も規制され、満州での慰問落語。NHK大河ドラマ『いだてん』で見たような。こっちが先だけど。あっちは志ん生だった。そこで『昭和元禄落語』のモデルは誰なんだろうと考える。一人は談志だろうな。そうなると、もう一人は二代目志ん朝か?それほど落語には詳しくないんで有名どころしかわからない。ただ型破りな助六は談志の面影を感じる。
読了日:01月28日 著者:雲田 はるこ
https://bookmeter.com/books/4526382

■昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)
WOWOWで2月からオリジナルドラマ『にんげんこわい』がはじまるっていうんで、noteに落語本が紹介されていた。その中のコミックがこれでKindleの読み放題で読んだわけだ。サクッと読めて面白い。いろいろ落語の知識もためになるかどうかはわからないけど落語は楽しそう。実際に寄席はなかなかいけないだろうからYou Tubeで落語を楽しみたい。世の中便利になったもんだ。笑っちゃうね。なんだ、アニメもあるのか。世の中知らないことばかり。
読了日:01月28日 著者:雲田はるこ
https://bookmeter.com/books/5614898

■思案の敗北
小山初代との自殺未遂(翌年に『姥捨』)の後に書かれたものだと思われる。とめどめもなく書き散らした日記のような随筆。ルソー『懺悔録』(『告白』?)についての批評的感想。ダンディズムがダンテからの語源とか想像する。「地獄変」を見過ごさなければならないダンディズム。次なるステップとしての覚書のような断片日記。
読了日:01月28日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/6206018

■最貧困女子
「貧乏」と「貧困」は違う。「貧困」には、「三つの無縁」と「三つの障害」から貧困に陥る。三つの無縁とは、「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」だ。一方で三つの障害については「精神障害・発達障害・知的障害」と考える。マイルドヤンキーと呼ばれるプア充は、郊外地域(国道16号線界隈と言われる)を拠点としながら不良仲間どうし疑似家族的に共同体を育んでおり、貧乏な生活だが人間関係は貧しくはなく、貧困にも陥らない。孤立してないのだ。最貧困女子は、シングルマザーでありながらも地域から孤立して、
読了日:01月28日 著者:鈴木大介
https://bookmeter.com/books/8968965

■不良少年とキリスト
歯痛と酔っぱらいの戯言なのだが、けっこう太宰の核心を突いているように思えるのだが。
読了日:01月28日 著者:坂口 安吾
https://bookmeter.com/books/5602281

■パウロの混乱
太宰はキリスト者だと思ってはいたが、本人はパウロ的だったと思っていたのか?文壇のパウロ?
読了日:01月28日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/6420706

■創作余談
本当はこういう文章は書かないでいいと思うのだが出版社に対する義理と読者サービスなのか?原稿料になるんなら酒も飲めるという感じ。
読了日:01月27日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/6426657

■太宰治との一日
坂口安吾の追悼文とは違い、大人の追悼文という感じだ。要は太宰の顔が一つではなく、様々な相貌があったということだと思う。それは心中相手にも言えることで立ち位置によって違うのかなと。この後に安吾の追悼文を読むと太宰治を多面的に読めるかも。
読了日:01月27日 著者:豊島 与志雄
https://bookmeter.com/books/6326834

■わが戦後俳句史 (岩波新書 黄版 322)
「朝はじまる海へ突込む鴎の死」
金子兜太(1919-2018年)は、「前衛俳句」の雄であるよりは「伊藤園 俳句大賞」の審査員としての顔の方が馴染み深い。最初に手にしたのがいとうせいこうとの共書『他流試合――俳句入門真剣勝負!』だったからかもしれない。生まれ年が大正八(1919)年だったことから、「花の大八」組とか西暦から「一句一句」と称していたぐらいに俳句人生。その容姿故か俳号「兜太」からくるのか、都会的というよりは土着的なイメージが親しみを呼ぶ。
読了日:01月26日 著者:金子 兜太
https://bookmeter.com/books/6532972

■郷愁の詩人 与謝蕪村 (岩波文庫)
蕪村忌だという。

【今日の季語4255<1489】蕪村忌(ぶそんき):晩冬の行事季語。画業にも秀でた俳人与謝蕪村の忌日。陰暦天明三(1783)年十二月二十五日に六十八歳で没した。雅号にちなむ「春星忌」の傍題も。◆太筆に墨のぼりくる蕪村の忌(嶋田麻紀) #kigo  
それで蕪村忌で俳句を詠もうとしたのだがイメージ的に何も浮かばない。むしろ苦手な俳人かもしれぬ。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n4d3fb62e4e6e
読了日:01月25日 著者:萩原 朔太郎
https://bookmeter.com/books/39599

■田舎者
超ショートショート。カフカ『インディアンの願い』といい勝負か?けっこう核心をズバッと突いている。
読了日:01月23日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/6192829

■葉
ヴェルレエヌの詩の引用からギリシア時代の女性詩人サフォまで、断片的手記が並ぶ。現代詩のような。多少薬物中毒的な幻影が入っているのか。バローズ的なカットバックの手法とか。太宰の文学は小説ではなく詩から始まったのか。そして、評論的な戯言とか。エッセイ的な散文文学をすでに太宰はやっていたのだ(日本には随筆の伝統はあるが)。芥川龍之介『雛』から着想を得た『哀蚊』や「マッチ売りの少女」を思わせるロシア風?『花売りの少女』の散文は太宰初期のロマンティシズム文学。
読了日:01月23日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/5602342

■逆行
「くろんぼ」はサーカス団に捕らえられた黒人奴隷の話。差別語だが太宰の心情は黒人奴隷に寄り添うように描かれている。ちょっとカフカを連想させるのだが、この時代にカフカを読んでいたのかな?「盗賊」はフランス語の試験問題に「フロオベエルはお坊っちゃんである。弟子のモオパスサンは大人である。」という文章は覚えていた。こういう警句じみた言葉は得意だ。太宰の中にある(大人になれない)子供と打算的な大人との対立。道化的な語りも出てきている。
読了日:01月23日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/5890516

■道化の華
道化とは、語り手太宰のことなんだろう。心中未遂の大庭葉蔵は、モデルであって客観的に描いているとは思う。ヴェルレエヌを愛する純粋な青年像だ(だから『葉」のイメージする名前にしたのだと思う。『葉』と対になっている作品だ)。大庭葉蔵を囲む青年たちと打算的大人との対比(特に兄)。それはしょせんポンチ画であるのだが、賞を得ても看護婦を囲っている医院長と対比させている。むしろポンチ画で行こうという若者たちの未熟さは、純粋なのだ。若い看護婦が彼らのマドンナ的な存在の華。そのロマンティシズムは青春文学。
読了日:01月23日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/5600002

■サミュエル・ベケット (白水Uブックス)
後期三部作と『ゴドーを待ちながら』のベケット解説本。カフカに於いて書くことが最後に残された尊厳だとしたら、ベケットはそれを強制されているわけだった。書くことを強制されている存在、それは精神病院の分析医と患者の関係かなとも思う。それは外部の神的位置にいる権力構造だという。ベッドに括り付けられていつまでも死ねないベケットの登場人物。ベケットの登場人物は声を失っている。声が届かない。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n41c7db7e025f
読了日:01月23日 著者:高橋 康也
https://bookmeter.com/books/12280392

■作家と楽しむ古典 松尾芭蕉/おくのほそ道 与謝蕪村 小林一茶 近現代俳句 近現代詩
池澤夏樹個人編集の日本文学全集『おくのほそ道 与謝蕪村 小林一茶 近現代俳句 近現代詩』のガイド本。全集を読んでなくてもそれぞれの俳人の読みどころを語っているので興味深い。池澤夏樹だけは「近現代詩」だが、声に出して読みたい日本の詩という趣。日本の詩歌には七五調が根付いている。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n173adc7639fd
読了日:01月21日 著者:松浦寿輝,辻原登,長谷川櫂,小澤實,池澤夏樹
https://bookmeter.com/books/13640686

■青空文庫の提案
読了日:01月21日 著者:青空文庫
https://bookmeter.com/books/8197129

■思ひ出
少年時代の思い出。最初に読んだときはもっと凄いことが書かれていたと思ったがそうでもなかった。太宰の後の作品とごっちゃになっていた。まあ、天の邪鬼な餓鬼大将のイメージ。金持ちのボンボン。兄妹多い。今の核家族化以前の大家族の中で家柄から外れていく様子。長兄が文学は駄目だと言ったのに文学者になろうと決意する。才能はあったのだろう。そうだ、「道化の華」とごっちゃになっていたんだ。
読了日:01月21日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/5653857

■盲人独笑
琴の名手は、稽古日記を書き続けたことによって名前が残った。音楽は、エリック・ドルフィーの言葉を待つまでもなく、外に放たれると消えゆくものである。その音楽性と毎日の努力がそこにあるのである。この日記に太宰は励まされたのかもしれない。毎日書くことは、尚も自身には必要なことだった。
読了日:01月20日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/6185379

■文盲自嘲
太宰の自虐が入っているが面白い。面白さはそれ以前に書かれた『盲人独笑』を読まねばならない。葛原勾当は、日記を書く(盲人だからハンコだったわけだが、それが現在の活版術に繋がっている)のを密かに独笑していたのかもしれぬ。音楽ならば独奏なんだけど、日記だから独笑なのだ。それが太宰自身に返ってきてきてしまい自嘲するしかなかったという落ち。
読了日:01月20日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/5982980

■魚服記に就て
鎮魂と復讐があったのは太宰の記述通りなのだろう。『魚服記』を身にまとうことによって、太宰は作品を書き続けなければならなくなった。自虐の根源はそこにあると思う。井伏鱒二の言葉は救いというより十字架だった。
読了日:01月20日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/5610078

■魚服記
元は中国の民話を泉鏡花が幻想文学に仕立てたものであるが、太宰はそれを己の神話としたような感じである。スワの犠牲の上で汲み尽くすことのない水が湧いてくるのだ。それは作品のアイデアかもしれない。心中事件が太宰の中にあったのは確かなような気がする。太宰文学の源のような作品。
読了日:01月20日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/5683491

■青い麦 (光文社古典新訳文庫)
『失われた時を求めて』「スワンの恋」のオデットがカトレアなら、『青い麦』のヒロイン、ヴァンカはツルニチニチソウだ。棘のある青アザミも登場してくるが.........。鹿島茂の「解説」でコレット『青い麦』がフランス文学で「若い男女の恋を描いた」小説とするのだが、コレット以前にナポレオン時代に ジャック=アンリ・ベルナルダン・ドサン=ピエール『ポールとヴィルジニー』が書かれている。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nfd11650de174
読了日:01月19日 著者:シドニー=ガブリエル コレット
https://bookmeter.com/books/841693

■失われた時を求めて〈1 第1篇〉スワン家のほうへ (ちくま文庫)
『プルーストと過ごす夏』という評論集を去年読んでいたのかな?『失われた時を求めて』は、二回目のチャレンジで高遠弘美訳で6巻まで読んだがそれ以降訳がでていないという。それで全集を大人買いした(これも20年ぐらい昔だと思う)ちくま文庫をまた読み始めたのだ。今年こそは全巻読破したいものだ。プルースト没後100年だという。『The Proust album』も出ています。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nc35a62e78a9f
読了日:01月18日 著者:マルセル プルースト
https://bookmeter.com/books/485108

■変身ほか (カフカ小説全集)
カフカの生前に公に発表されて本の形になった作品や雑誌に掲載された短編集である。カフカの長編では、ブロートの手が加えられており(ブロートにより編集された)、純粋にカフカの作品と世に送り出されたのはこれらの短編だけなのである。『変身』は短編というより中編だが。

カフカの作品の特徴はズバリ「生成変化」。これは誰も言っている。特にドゥルーズのカフカ論はお勧めかも。やたら言葉が難しいがカフカやドゥルーズは勢いで読めばいいのです。立ち止まらないで振り返らないで一気に読むと快感が得られる。
読了日:01月15日 著者:カフカ
https://bookmeter.com/books/422061

■生きづらい明治社会――不安と競争の時代 (岩波ジュニア新書)
最近になってSNSなどで繰り広げられる「自己責任論」は、まだ近代化まもない明治の維新政府の中で国家予算もなく、それまでの幕藩体制による村落共同体から国民という国家概念によって「通俗道徳」という思想が出てきた。それは、個人の貧しさは努力が足りないとする「自己責任論」の大本であった。金がない明治政府は窮民救助法案を通すことが出来ずに、不景気(松方デフレ)の責任を国民に負わせたのだ。それは当時の選挙制度が税金を収めた男子に限られていたので、貧困層は切り捨てられていく。
読了日:01月15日 著者:松沢 裕作
https://bookmeter.com/books/13116995

■モンスーン (エクス・リブリス)
現代社会の問題を不条理に描く韓国の作家の短編集。不条理短編の名手という感じか。解説でフラナリー・オコナー『善人はなかなかいない』と共通性がある作家のように書いてあった。自分はカフカを彷彿とする管理社会の中での情動的な感情の揺れを描く作家のように思えた。犬がよく登場するイメージ。管理者の忠犬なのだが、カフカの犬と違うのは忠犬ではいられなくなることか?「カンヅメ工場」が素晴らしい。似たタイトルの作品がある小山田浩子に似ているかも。ただピョン・ヘヨンは男性視点の語りが特徴的。女性なのに。
読了日:01月12日 著者:ピョン・ヘヨン
https://bookmeter.com/books/13962409

■伊勢物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
Kindleで読んでいた。
読了日:01月11日 著者:
https://bookmeter.com/books/500729

■虚構の春
書簡体小説だが、通常だと一対一の信頼のおける友とか愛人のやり取りだと思う。ここでは太宰に宛てられた多数の手紙によって太宰の自画像を描いていこうするメタ私小説だった。それは原稿屋のお伺いから借金とり、田舎の親戚やら親友、さらに1ファンという多面的な内容だが、その全てが太宰治の人となりを描いているのだ。実際の手紙をフィクション的に脚色したものであり、違う文体でかき分けてはいるが諧謔的に自己道化的でもある。その前に発表された作品の評価や芥川賞の顛末など。心中未遂事件を語るファンの手紙は太宰の姿を彷彿させる。
読了日:01月11日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/7169672

■めくら草紙
「枕草子」のパロディという体裁を取りながら私小説的なメタフィクションです。このへんが太宰を侮れないというか、古典を読みながら、それを模倣し(庭木の花の情景)、「枕草子」とは正反対の「めくら草紙」という随筆を描いてる。隣のマツ子は読者サービスですね。あれこれ想像してしまう。
読了日:01月11日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/6835398

■川端康成へ
今月は「太宰治月間」ということで読んで見ました。『道化の華』が芥川賞候補になり、川端康成の選評「作者の目下の生活に嫌な雲ありて、」と書かれたのを作品の評価と作者の生活は別だろうと思うのですが、太宰治はそれが表裏一体ということもあり、この文章を発表したのだと思います。メタ・フィクション的に。道化(『道化の華』の続き)の一部で太宰なりのパフォーマンスと読めました。そうやって現状の文学界を揺さぶりたかったのです。
読了日:01月11日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/5598332

■土佐日記(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
紀貫之が女性に扮して土佐から京までの帰還の旅を描いたフィクション。当時、男は漢字で官庁の日記を書くことはあったが、私人としての日記は書けなかった(書いたかもしれないが発表することなどなかった)。

『土佐日記』はそういう意味でブログやSNS的なりすましで書くことが出来た日記なのである。それは当時官僚だった紀貫之は不平不満を公にすることは出来ず、侍女であるとすることによって、肩代わりして語ることが出来たのだ。また漢字文化よりも和(ひらがな)文化を普及させることも出来た。それは紀貫之が思う雅の世界なのである。
読了日:01月10日 著者:紀 貫之
https://bookmeter.com/books/64980

■これで古典がよくわかる (ちくま文庫)
正月から一人、『百人一首』を読んでいるのだが、さっぱりわからん。それで古本屋で橋本治『これで古典がよくわかる』を見つけたから読んでみたら、和歌がわかった(オヤジ・ギャグではない)!あれは、原理主義が激しい時代の日本で(タリバンが支配していると思えばいい)、目と目を合わすだけで、まぐわう(今では性交するの意味だが、本来は目交わう)時代の恋文の暗号文だったのだ。だから掛詞が多い。以下、https://note.com/aoyadokari/n/ne75b7961bed3
読了日:01月09日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/499148

■星の時
語り手が男性で貧困の中に生きた「マカーベア」という女性をモデルとして描く物語。語り手との「マカーベア」の距離感は、物語行為としての語り手と物語内容とのヒロインを分離させていくが、例えばそれは「奇妙な果実」を歌うビリー・ホリデイのように、アメリカ黒人の物語が彼女の歌の中で生きていた(事件)だったのだ。それを作者であるクラリッセはブラジルの虐げられた女性の象徴の物語として他者に手渡す。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n0b798c4e6961
読了日:01月08日 著者:クラリッセ・リスペクトル
https://bookmeter.com/books/17571878

■竹青
『新釈諸国噺』の後に書かれた中国『聊斎志異』によって書かれたファンタジー。ちょっと綺麗過ぎるか。官吏試験を目指しては落第する青年が、人生に嫌気がさして、洞庭湖(屈原が飛び込んだ湖だという)で呉王廟を守る神烏を眺めて寝転んでいたらいつの間にか眠ってしまい烏になった世界と人間界を行き来する。結局、人間界に戻るのだが、太宰が創作活動を積極的にしようとした時期と重なるのか。結婚して、子供が生まれて、日本は敗戦間際だったが太宰の作家時代では幸福だったのかもしれない。太宰の純真すぎる一面が覗けたようなファンタジー。
読了日:01月08日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/6260938

■新釈諸国噺
太宰治が西欧の小説より井原西鶴の小説の面白さを伝える12の短編。太宰寄りにアレンジされているのか、太宰の小説に出てくるダメ男だらけだった。太宰の語りの上手さは落語のようだ。西鶴は落語になっていた。西鶴と太宰の共通点は金に対する未練と諦念が交差していく。それは樋口一葉にも通じるのだが、一葉の潔さは太宰にはなく、未練たらたらな部分が人間らしいのか人間失格なのか?道行き(場面移動)の描写や語り方も上手かった。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n3b8cd72fd680
読了日:01月07日 著者:太宰 治
https://bookmeter.com/books/6086224

■葉桜と魔笛
NHKラジオ朗読で。執筆当時は戦時中、戦時中にもこのようなロマンティシズムの作品が書けたのは『若草』という少女雑誌掲載だからだろう。よく読めば太宰の軍部批判が込められているような。それは「軍艦マーチ」をセンチメンタルな口笛で吹いていること。この口笛の音色がこの時代は許されなかったのだ。その前段、姉は妹の死で神を信じなくなったと告白する。当時の神は天皇だ。また理性的に考えてあの魔笛は父だと思うと告白する。父のロマンティシズムは太宰のものだろう。またこの作品が「歌物語」ということだ。
読了日:01月07日 著者:治 太宰
https://bookmeter.com/books/5633692

■女ことばと日本語 (岩波新書)
「女ことば」というのは「言語イデオロギー」で社会の関係性の中(男尊女卑)で構造的に組み込まれてしまう政治システムの現れなのだ(フーコー『言葉と物』)。言文一致は、最初から共通語があったわけではなく、書生言葉としてエリートの言葉としての東京語が共通語として認知されていく。それに倣って山手言葉が日本の家父長制の中で主人に従属する女ことばとして認知されてきたのだ。以下、https://note.com/aoyadokari/n/n3a13f3ebf3c7
読了日:01月05日 著者:中村 桃子
https://bookmeter.com/books/5303913

■わかれ道
一葉の「奇蹟の14ヶ月」最後の作品なのだが、「嫌な子だね此様(こんな)遅く何を言いにきたか、又御餅(おんかち)のおねだりか、」「御餅」が「女房詞」なのだが、これは近所の弟分がやってきたときの挨拶。シスコン(シスターコンプレックス)に訴えかけてくるのだと思った。弟分は、見捨てられた子供で置き去りにされた獅子舞の子だった。足が痛くて歩けず泣いていたのを傘屋の婆さんが連れてきて、それで二十歳の仕立て屋のお京さんに懐いていた。お京さんがある旦那に見初められて引っ越しをする。
読了日:01月05日 著者:樋口 一葉
https://bookmeter.com/books/12453404

■思い出トランプ (新潮文庫)
年末から正月にかけてのNHKラジオ「朗読」での特別番組で聴きました。朗読は自分で読まないで聞くだけなので楽な面もあるが、集中できないと途端に話が見えなくなってしまう。それで繰り返し聞いたのも何話かあります。向田邦子のネガティブさは、人間の闇の部分を晒すことで、それがホラーやミステリーのようにも読めるのだが全体的に神経症的で、ちょっと自分には合わなかった。以下、https://note.com/aoyadokari/n/na772affbbd13
読了日:01月04日 著者:向田 邦子
https://bookmeter.com/books/562571

■樋口一葉 (明治の文学)
現代語訳はないですが絵入りの解説が樋口一葉の時代の髪型用具などを丁寧に説明してあるので理解が深まります。あと日記と解説もいい。一葉が文学を志したのは7歳で義侠本を読んだからです。それと外国文学には興味がなく、もっぱら古典や江戸戯作もの(井原西鶴など)を読んでいたようです。「奇蹟の14ヶ月」は、吉原に駄菓子屋を始めたので、そこで『たけくらべ』の情景やら実際に車から降りて買い物に来てくれる遊郭の女たちと交流を持ったのです。理想の文学は、稼ぐことの文学ではなく変革する文学を求めた。
読了日:01月04日 著者:樋口 一葉
https://bookmeter.com/books/521809

■十三夜
これは樋口一葉の『ドライブ・マイ・カー』。後半、実家から嫁ぎ先に戻る時に車屋の録之助に昔好きだったと告白されるのです。そして今夜は十三夜である。十五夜は過ぎてしまった。それはかぐや姫が帰った月のファンタジーです。そこで嫁ぎ先前で降りて別れて行く二人。何故?遅かったのか。子供を産んでしまったからです。かぐや姫が金持ちと結婚して子供を産んだらもう月の世界には帰れないでしょう?遅すぎたのです。何もかも。でも録之助が語ってくれたファンタジーだけは心の中に収めるのです。これが二部構成である理由。
読了日:01月04日 著者:樋口 一葉
https://bookmeter.com/books/5645499

■にごりえ
これはほとんど「鬼滅の刃 遊郭編」だった。それもお力ほどの上弦の鬼はいるだろうか?すごくきっぷの良い台詞回し。悪のヒロイン間違いなし。それに対する魔王と称するのは妻の座を守ろうとするお初であった。男はアホの餌食としか思えない。
読了日:01月04日 著者:樋口 一葉
https://bookmeter.com/books/5664336

■右大臣実朝
今年の大河ドラマが三谷幸喜『鎌倉殿の13人』とあって、太宰治『右大臣実朝』も参考にするのだろうか?と思って読んだのではではなく、たまたま今月は太宰月間にしようと思ったのだ。太宰の歴史小説ということだが、戦時下で自由に表現出来ることも限られていたので歴史モノなのかと思った。実朝がふと口ずさむ言葉、
「アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ」は今にぴったしの言葉だと思ったが鋭いのはここだけだった。以下、https://note.com/aoyadokari/n/ncd480ef652cb
読了日:01月02日 著者:太宰治
https://bookmeter.com/books/11164362

■たけくらべ
『たけくらべ』の文語体は、ちょっと難しいと思う。慣れればそうでもないのかもしれないが、語り手の文語の中に様々なキャラ立ちした登場人物の会話が行き交うのだ。喧嘩のシーンから心の声まで。『大つごもり』に比べて長いし。最初に現代語訳で予めストーリーを知っておくとより楽しめます。川上未映子がお勧め。色街という特殊な空間、最初に出てくるのが神社仏閣の道行き(近松門左衛門の手法かと思う)で異次元に放り込まれるのである。今、やっている『鬼滅の刃(遊郭編)』文学バージョン。むしろこっちが老舗だ。
読了日:01月02日 著者:樋口 一葉
https://bookmeter.com/books/5664337


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