記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

コディ・スミット=マクフィーはジェームス・ディーンの再来か?

【Netflix映画】『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(英・米・豪・他/2021) 監督ジェーン・カンピオン 出演ベネディクト・カンバーバッチ/キルステン・ダンスト/ジェシー・プレモンス/コディ・スミット=マクフィー


解説/あらすじ
大牧場主のバーバンク兄弟はある日、地元の未亡人ローズと、その息子ピーターと出会います。その後、ジョージはローズの心を慰めて彼女と結婚し、家に迎え入れることに。これにショックを受けたフィルは、すべてを壊そうと、残忍で執拗な攻撃を仕掛けます。しかし、とある事件をきっかけに、そんな残酷な男フィルにも、人を愛することの可能性が芽生えていくことに。

『ピアノ・レッスン』のジェーン・カンピオン監督。もともとアメリカ人でない人がアメリカの分断を描く視点が面白い。けっこう地味な展開で暗い話。それでも緊迫感ある感じで繋げているのは、カンバーバッチの演技もあるが、コディ・スミット=マクフィーの演技も光る。ちょっと違うけど『エデンの東』のジェームス・ディーンのような若者。

題名は暗示的で、聖書の言葉から来ている。聖書の詩篇「私の魂を剣から、私の命を犬の力から救い出して下さい」。「犬」は邪悪な存在。象徴的な物語でそんな感じも『エデンの東』と繋がる。

カウボーイのカンバーバッチも単なる暴力男ではなく、ボーイスカウト的な共同体でのリーダー的存在なのだ。そこに異質な(都会的)未亡人が弟と結婚してやってくる。

弟は都会的なスノッブな人物だった。兄と弟の対称性。弟が市長を招いて妻のピアノを披露したいという。そして兄に風呂に入ってから出席するように言うのだ。兄の野生的な生活と弟の都会性は、地方と都市の対立を描く。

ピアノの反復練する未亡人にギターを合わせて弾くカンバーバッチの卒のなさ。兄はけっこう出来る奴なのだ。ピアノとギターの対称性。それでカウボーイのリーダーなんだが、開拓者の男から受け継いだ共同体の精神を大切にしている。

カウボーイの共同体がホモセクシャル的に描かれているのも面白い。そして、そのホモセクシュアルに近づいていくのが未亡人の息子。都会の洗練された青年の無邪気さを潜めながらけっこうな知能犯なのは医学生だからか?

そして母親がカウボーイの暴力性に怯えながらアル中になる。弟の夫は役立たずで、息子が母親を守るというのだった。その心理的な駆け引きが微妙で面白い。このへんの脚本がしかっりしているのでアカデミー賞も頷ける。

息子はホモセクシャルを利用して近づくのだが、最初はカンバーバッチの暴力性に従属しているような関係なのだ。師匠と弟子の関係。師匠が障害物はどける必要があるという(開拓者精神)。アル中の母親がお前の障害物だと。排除の論理だが、それを実行する息子は。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?