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高粱畑に隠された酔っ払いの中国史

『赤い高粱 』莫言 (著), 井口 晃 (翻訳)(岩波現代文庫– 2003)

婚礼の輿が一つ,赤に染まる高粱畑の道を往く.輿に揺られる美しい纏足を持った少女.汗に濡れ輿を担ぐ逞しい青年.中国山東省高密県東北郷.日本軍が蛮勇を振るうこの地を舞台に,血と土,酒に彩られた一族の数奇な物語が始まる.その名「言う莫れ」を一躍世界に知らしめた,現代中国文学の旗手の代表作.2012年ノーベル文学賞受賞作

チャン・イーモウ監督『赤いコーリャン』の原作です。中国のマジック・リアリズムというべき小説で、語り手(騙り手である)の孫が祖母の時代の日本侵略時代を語る。その抗日戦線の豪族が酒好きの祖父で、赤い高粱は高粱酒の酩酊状態での戦争の記憶、高粱のイメージが重要なモチーフで、「サトウキビ畑」の歌みたいな、その中で戦闘があったり、(秘密の)隠れ家だったり、その鋭い葉で人の肌を切るが男女の営みにはベッドになる。それから酒を造ると伝承が生まれる。おしっこを入れると銘酒になる?



この小説での時制は直線的ではなく、振り子運動のように過去に戻ったり現在に返ってきたり。それを重ねていくと円環構造的(フーコーの振り子か?)に眩暈を引き起こす豊穣な小説世界へ導いていく。日中戦争時の小説なので、日本軍は鬼子として描かれています。日本軍の中国人に対しての仕打ちが残酷な場面として描かれいるが、中国人が日本人に対してした仕打ちもそうとうな残酷さを持って描かれている。あれかこれかではなく、あれもこれも描いてみせるのが莫言なのである。(2012/12/22)


「続赤い高粱」はまだ読んでなかったですけど、続編があったようです。


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