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都合のいい女にはならない姫たち

『源氏物語 20 朝顔 』(翻訳)与謝野晶子(Kindle版)

平安時代中期に紫式部によって創作された最古の長編小説を、与謝野晶子が生き生きと大胆に現代語に訳した決定版。全54帖の第20帖「朝顔」。源氏のいとこにあたる朝顔は斎院であったが、喪に服するため桃園宮に下がってきた。源氏は昔からの思慕を伝えるが聞き届けられない。二人の関係に気を揉む紫の上に「あなたは藤壺に似て素晴らしいが嫉妬深いところが欠点だ」と諭す。夜、夢に藤壺が出てきて二人の過ちが人に知れてしまったと恨み言を言った。死してもなお罪の重さに苦しんでおられるのかと源氏は阿弥陀仏を念じ続けた。

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『源氏物語』を読むのが朝活になっている。と言ってもユーチューブを聞きながら風呂に入るのだった。これを「源氏風呂」という。今日は「朝顔」姫!のご指名。のぼせてしまう。

本題。斎宮というと伊勢の斎宮である六条御息所の娘かと思ったら、こちらは加茂の斎宮である。斎宮は由緒ある家系ということで、朝顔の君と光源氏はいとこ同士ということだった。いとこ同士というのがミソだ。最初に異性を意識することはよくあることかもしれない。

「朝顔」は「夕顔」に比べて高貴なという意味があるようだ。当時は花よりも種を薬として用いた中国からの輸入品だった。そこらへんに咲いている「夕顔」とは違う。ただ蔓草故にどこかに巻き付いていなければならない心もとなさだろうか?それは無論、光源氏ではなく、信仰(斎宮)ということだったと思うのだ。その邪魔をするのが光源氏だった。

紫の上には手紙だけのやり取りだと説明するが光源氏のこれまでの行いを顧みると信じる気持ちになれない。手紙のやり取りだけだったというと実際にセックスされるよりも嫌なことかもしれない。そこに純粋性があるような気がする。

光源氏の都合のいい女にしようとした紫の上なのだが納得するわけがないのだが、光源氏が話した雪だるまの譬え話が良かった。幼い頃の雪だるまの想い出。転がした雪だるまが幼子らでは動かせなくなったという。微笑ましい譬え話だ

それで紫の上の心が溶けるとは思わないが。その対称として、尚侍も再登場。これはほとんど心なくセックスだけの関係なのだ。尚侍は散々なことを言われているがおまえモナーだよな、光源氏。老いて盛んなのはお前の方だろう。

朝顔の君と源尚侍の相対する女を取り上げ、紫の君の教育をした光源氏ということか?

(光源氏)
見しをりのつゆ忘られぬ朝顔の花の盛りは過ぎやしぬらむ
(朝顔の返し)
秋果てて霧の籬(まがき)にむすぼほれあるかなきかうつる朝顔
(光源氏)
いつのまに蓬(よもぎ)がもととむすぼほれ雪降る里と荒れし垣根ぞ

(内侍)
年経(ふ)れどこの契りこそ忘られね親の親とか言ひし一言
(光源氏返し)
身をかへてのちも待ち見よこの世にて親を忘るるためありかやと

光源氏は藤壺を思い出すのは、もともと熟女好きなのか?

(光源氏)
かきつめて昔恋しき雪もよにあはれを添ふる鴛鴦(おし)の浮寝か
とけて寝ぬ寝覚さびしき冬の夜にむすぼほれつる夢の短さ

最後の歌は紫の上が隣に寝ているのに思い出すのは藤壺なのだ。


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