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今月は詩集特集!

『対談 現代詩入門 』大岡信, 谷川俊太郎(中公文庫)

最近古本屋で餌箱を漁っているせいか、詩集ばかり買ってしまって、それは詩集がそれほどよまれてなくてゾッキ本のような扱いを受けているのかと思いまして、今月は詩集特集としようと思う。

大岡信と谷川俊太郎の対談本は、以前にも『詩の誕生』が面白かったが、詩の批評家としての大岡信と実作者としての谷川俊太郎はいいコンビだと思う。大岡信は、詩の歴史についても詳しいし、谷川俊太郎の実作面のことなども面白い。


いま詩はどんな状況にあるか

それで手始めに『現代詩入門』ですね。以外に難しいと思うのは、それほど読まれない。まあ、一番の有名人が谷川俊太郎さんでしょうね。彼の詩はそれまで我々で書かれていたのをわたし(ぼく)で書いたと言ってますね。

世代というか社会的な詩から私的な詩ということでしょうか?大上段にかざした例えば冠婚葬祭のときに親族代表みたいな決まりきった挨拶のような詩が、昔は多くあったということです。まあ、冠婚葬祭じゃなくて、例えば戦後詩だったら、戦後宣言のような挨拶詩みたいなものです。

それが歌詞だったらフォーク世代で吉田拓郎から井上陽水あたりから私小説的なポエムが出てきた。それが学生運動が下火になってくるとアイデンティティを私生活のほうへ、フォークからニューミュージックという流れですかね。

そういえば最近の音楽シーンでの歌詞というのは非常にレベルが高いですけど、全部身の回りのことなんですね。強烈な自己主張してくる歌でも周りのことからですかね。世代間のギャップがあると思うのです。それでも一方ではAKBとかの歌詞は私と同じオヤジが書いていて人気があるんですよね。よくわからない。まあ、詩とは違う話なのかもしれないですけど。

この対談の80年代から、すでに40年も過ぎている。私が青春時代の頃ですよね。すでに現代詩よりはニューミュージックの方の歌詞の方が影響が大きかったような。例えば中島みゆきなどは、詩の方でも注目されていた。それは井上陽水の時からすでに批評が出ていました。


竹田 青嗣 『陽水の快楽――井上陽水論』

詩で非常に感動したのもメロディあってのことだったのか。例えば、甲斐バンド「かりそめのスイング」はスイングギターのジャンゴ・ラインハルトのメロディーが大きなウェイトを占める。今流行のミックスメディアと考えれば、独立した詩だけの時代は70年代には無くなったのではないか?それは現在でもあいみょんの詩とか評価されているわけです(多分に懐かしさなんだと思います)。


この対談でも詩人の詩がフォーク世代の歌詞に上手くはめ込まれて歌われているということが云われる。それは、弾き語りのフォークが、アメリカのビート・ジェネレーションの詩人からボブ・ディランのような弾き語りのミュージシャンに手渡されたからではないか?ボブ・ディランはもはやノーベル文学賞も取っていますし。

ボブ・ディランからラップミュージシャンまでは距離が短い(手法的に)。そして、ラップが韻とかリフレインに拘り、むしろ音楽的には同じリズムで反復していく。例えば、宇多丸のライムスターなんか詩の強烈なイメージがある。それは、サブカルというジャンルのうちに含まれるのかもしれない。

どんな詩を読んできたか どんな詩を読んだらいいか

バロック的(古典主義的)なものより、わかりやすい言葉で書かれたもの。谷川俊太郎お勧め詩人。中原中也、三好達治、特に宮沢賢治。シュベルヴィエル。吉野弘、黒田三郎、茨木のり子、川崎洋、石垣りん。論理で読むものでもなく、感性で読むものでもなく、生理みたいなもので読む。

若い人たちの詩を読んでどう考えたか

余白の効用がなくなる。文語の余韻。韻文よりは話し言葉でつなげていく。過剰な言葉、散文化。生活に密着型(詩が生活になっている)。経験がなく新機構好きな若者(投稿雑誌に多い)。

ことば・日本語・詩

このへんは大岡信の批評性が面白い。リズムがあると意味的たいしたことがなくても詩として通用する。和歌とか大したことを言っているわけではない。日本の詩歌が和歌や俳句だけでなく、漢詩もあって漢詩の書き下し文がリズムを醸し出すという話。漢詩は盲点かもしれない。あと係り結びが面倒だとか英詩の場合、後に戻ることがなく推進力でぐいぐい行くとかそういう日本詩との比較も面白い。

現代詩のさまざまな試み

これは詩人がアルバイトでラジオ詩というのをやってみたら、演劇詩みたいなことになって、そこから寺山修司の演劇が生まれたとか。現代劇の詩の言葉の部分、若い才能がそっちの方に行ってしまったとか。どうも残っている人は保守的な人ばかりだとか。

あと外国では、詩は朗読するものとして、音楽のように愉しみとしてある。日本人は詩を学ぶという面が強すぎて楽しむということをしない。


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