たこ八郎と重ねた中也絶唱
『完本 中也断唱』福島泰樹
「中也断章」のⅠが中原中也の伝記を短歌にしたもので、これが一番面白かった。中也と長谷川泰子と小林秀雄の三角関係を短歌として物語形式で歌っているのだ。福島泰樹の絶叫は中也のいたたまれない姿と重なる。文字だけでもその姿を追えると思う。
この短歌の手法は新鮮だった。福島泰樹の短歌が中原中也に憑依するのだ。そしてⅡになると中也の詩を短歌に変える本歌取りだが、やはり中也の詩の方が面白いような気がした。それは中也の言葉に寄り添って似せることの模倣だから中也の詩の枠をはみ出すことはない。むしろ短歌形式によって中也の詩が矮小化しているようにも思える。それはあくまで文字によるものだから、それを絶叫という声に乗せた場合はまた違うのかもしれない。
その後何回かの絶叫コンサートの後に福島泰樹が知り合った人の挽歌と重ねていく風にうたは生成していく。とくにタコ八郎の挽歌は、タコ八郎の姿も重ねて哀愁を帯びていく。
実際にYou Tubeで動画を見たがよく聞き取れなかった。それはうたは生ものだからだろうか?歌人の朗読で言うと絶叫しなくとも寺山修司のようなうたのほうが響いてくるものがあると感じた。福島泰樹は同時代的な学園闘争とかの時代の後なのだ。時代性というセンチメンタルな部分があると思った。
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