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今日的問題をエンタメしながら西成という特殊地域で撮影された映画

『さがす』(日本/2022)監督片山慎三 出演佐藤二朗/伊東蒼/清水尋也/森田望智

解説/あらすじ
「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」そう告げた翌朝、父は娘をひとり残し、姿を消した。孤独と不安を押し殺しながら、娘は父の行方をさがし始める――。

大傑作映画『岬の兄妹』を撮った片山慎三の新作なので期待した。期待通りのエンタメ映画になっている。

脚本がいいと評判だが厳密に言うと破綻している。母を殺すときに娘はどうして気が付かなかったのか?後で父が犯人とどうして気がついたのか?あと警察が馬鹿すぎないか?大阪府警だからしょうがない?

それでも西成という地域で、サイコパスの男と実は人情脆い父親の対称性がいい。やっぱ役者がいいんだよな。父親役の佐藤二朗にしても娘役の伊藤蒼にしても娘と父の映画だからうるっとくる。サイコパスの犯人の人も自殺願望の強い女の役者(こっちはコメディ的)も上手かった。

最初に行方不明になる父を探すだけのストーリーも良かった。第二部で介護ケアと安楽死の社会的問題にスポットを当てる。パーキンソン病になる母親役のリハビリの姿が生々しい。そういうリアリティの出し方が上手い。それと父を探す第一部では、そういうリアリティを見せなかった。むしろしっかり者の娘とダメおやじのパターン。これって「じゃりン子チエ」だった。そういう対称性の出し方が上手い監督だ。

サイコパス的な快楽殺人者は今日的問題をはらんでいるし、それと対称的に人情脆い父親がいるのだ。父親は自分の信念がない人で、人情的なのだ。だからダメ親父のパターンになる。それを演じている役者の上手さを感じる映画だ。それとピンポンの使い方が上手い。あの音がいつまでも残響として残る。

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