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和歌のバイブルにすべし

『和歌のルール』渡部 泰明 (編集)

高校の教科書に載っている作品を中心に和歌の魅力を味わうのに十分な10のルールを選びました。初めて和歌を読む人々を思い浮かべて書かれた、わかりやすくて本格的な和歌案内書です。
目次
第1章 枕詞(まくらことば)―それは古風な約束事の言葉、訳せないけれど、意味がないわけではない。
第2章 序詞(じょことば)―一見関係なさそうな事柄なのに、人の心に形を与え、わかった気持ちにさせてくれる。
第3章 見立て(みたて)―風景をありえないものに一変させる、言葉の力。
第4章 掛詞(かけことば)―自然と人間を二重化した、意外性の世界。
第5章 縁語(えんご)―作者がひそかに仕掛けた暗号。“隠れミッキー”を探せ!
第6章 本歌取り(ほんかとり)―古き良き和歌を味わいぬき、それを自分の歌の中で装いも新たに息づかせる。
第7章 物名(もののな)―物の名前を隠して詠む、あっと驚く言葉遊び。
第8章 折句・沓冠(おりく・くつかむり)―仮名文字を大切にしていた時代に、和歌を使ったパズルがあった。
第9章 長歌(ちょうか)―長歌は、思い出を長くとどめるための記念写真。
第10章 題詠(だいえい)―題詠は、変わらない真実を表そうとする試み。

『古今集』や『新古今集』の和歌の技法を論じたもの。このあたりの技術論は凄いもので、日本の文芸モダニズム(ルネサンス)はこの頃にすでにやり切っているのだった。わずか31文字でその方法論だけ覚えてしまえば簡単というが、どうしてその31文字の中で最大限、恋する相手にラブレター(恋歌)を贈るというテクニック(装飾したラッピングで見せる)があったのだ。小野小町とか在原業平がスターだったのもこのへんの技術論をサラッとやってのけたからだった。

「シン・短歌レッスン」では『「古今和歌集」の想像力』をテキストにしているのだが、その著者の鈴木宏子先生も「見立て」の章に書いていた。あと渡部 泰明氏は雲の会のバイブルというべき『雲は美しいか: 和歌と追想の力学 』の著者でもある。さらに谷知子先生の古典本も良かった。

そうそうたる講師(なんだと思う)による和歌の基本構造(基本にしちゃ凝っている)なんだが、高校生向きだというが結構本格的な本だと思う。本歌取りの技法などここで学べばよい。「和歌に師匠なし」という定家から盗もうその「本歌取り」テクニック。

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