見出し画像

「お針子」という題名が相応しい

『オートクチュール』(フランス/2021)監督シルヴィー・オハヨン 出演ナタリー・バイ/リナ・クードリ/パスカル・アルビロ/クロード・ペロン/クロチルド・クロ

解説/あらすじ
エステルは引退を間近に控えたディオール オートクチュール部門の孤高のお針子。ある日、地下鉄で若い女性ジャドにハンドバッグを盗まれる。だが、警察に突き出す代わりに、エステルは彼女の世話をすることにした。なぜなら、エステルの唯一の財産――ドレスを縫い上げる卓越した技術、クリエイションの真髄――を受け継ぐ相手になり得ると直感したからだった。時に反発し合いながら、時に母娘のように、そして親友のように、厳しいオートクチュールの世界で、エステルはジャドに“指先から生み出される美”を授けてゆく…。そして、エステルにとっての最後のショーが目前に迫っていた。

「オートクチュール」といより「お針子」と言ったほうがいいかも。華やかなファッション界の世界を想像するとがっかりする映画だという。私はファッションよりもリナ・クードリ目当てで見に行ったので、それは期待しなかった。確かにフリース姿の娘がいきなりファッションの、それもディオールという有名ブランドの店に入るのはどうかと思う。そこにすんなり入っていければ面白いと思う

ナタリー・バイが引退間近のお針子チーフで、職がないかっぱらい少女を見込んでお針子にする。リナ・クードリが移民の問題児なわけだけどスリができるほど手先が器用だった(ブレッソン『スリ』を観れば器用さが必要とされることがよくわかる)。

ナタリー・バイが良かったというか、イザベル・ユペールと勘違いしていた。『ピアニスト』というピアノ教師が陥る名声と諦めのような、お針子であるがゆえの縁の下の苦労と下請け職人のプライドみたいなものを感じた。

リナ・クードリは現代っ子だから、そういう職人としての美意識を持っていない。その対立が面白い。リナ・クードリは最近よく見ている女優。移民フランス人でそれほどスタイルがいいわけでもなく美人というわけでもないけど個性が光る。捲し立てるようなマシンガントークは魅力だ。

職場での人間関係ドラマかな。オートクチュールも魅力なわけだけど。「ギロチン」という名の薔薇があるのを知った。フランス革命も意識してのことなのか。ギロチンが薔薇のブランド名になっている世界。

底辺住民とリッチな世界の間をつなぐ「お針子」という職業かな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?