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波の果て高く崩れてゴダール逝く

ゴダール死去の衝撃的ニュースで目覚めた。ゴダールは唯一の映画監督であり、映画関係者だけに影響を与えたばかりではなく、60年代から80年代の映画好き青少年のイコン的な存在。男だけではなく岡崎京子などの漫画にもその影響が伺えるほどの人で映画界でこれ以上にぶっ飛んだ人はいないだろう。かなり年取っても映画を撮る意欲だけは常に持ちつづけていたので、その意欲もなくなった時点で自死に近い死を選んだのだろう。ただただ残念である。

そのニュースのお陰で久しぶりに自宅映画鑑賞。U-NEXTと契約して、ゴダールの未完の作品を。こういうときは静かにゴダールの過去の業績を称え余計なことを言う前に映画をみたいものである。それがゴダールが何よりも望んでいたことなのだから。

最近ではビッグネームの死が多いのは、そういう過渡期的な時機なのだろうから極端に悲嘆したりはしなようにしていたのだが、ゴダールだけは別であった。

深夜にこれもタイミング良く『映像の世紀BE「映像プロパガンダ戦 嘘と嘘の激突」』。エイゼンシュテイン監督が日本の漢字の部首との組み合わせによって意味も変化することからヒントを得てモンタージュ手法を映画に活用した。

それによって編集作業で映画を効果的に魅せる方法は、ナチルのプロパガンダに取り入れられ、ハリウッドでも大いに活用された。『モロッコ』はフランス統治のドイツ人を敵として描くことでプロパガンダを仕掛けた映画だったと。

ゴダールもプロパガンダの手法としての映画を数多く撮ったが最終的には純粋に自分が撮りたいように撮ったのだろう。

読書。井筒俊彦『ロシア的人間-新版』。ロシア人の終末論的救済論にキリスト教があるのだが、それはロシアが韃靼人(タタール人)に支配され奴隷状態に置かれ、その記憶が貧しき人々の救いとしてのキリスト待望論につながった。

それはローマ・カトリックではなくビザンチン帝国の流れを汲む正教の末裔として皇帝が教皇の権力を得て異民族からロシアを救済する。そしてロシアはただ一つハルマゲドンから世界を救出出来る国だと伝統的に思い込む知識人たち。

その反動としての無神論もマルクス主義も終末論的な正教の代替にしか過ぎず、だから最後には正教に還っていくロシア思想というもの。井筒俊彦はイスラム学の権威だが、最初はロシア文学から入っていたのだ。ロシアのアニメ作家ユーリー・ノルシュテインの「ケルジェネツの戦い」はそのタタール(イスラム教徒)からロシアを解放する戦いを描いている。

ロシアにおけるイスラム文化の影響を観ると興味深い。井筒俊彦『ロシア的人間-新版』は戦後すぐに書かれたにもかかわらず今のロシアを明確に言い当てているようで、すごい本だった。それも文学から探っていくので興味深い。

まだまだ本調子とは行かず、今日は図書館に本を返却しに行こうかと思う。部屋に引き籠もっていると寝てばかりいるので。

「#暑い日のおすすめ」にご応募ありがとうございます。と通知が来たのだ、そんなの書いたっけと思ったら。「褌のすすめ」をアップしたことを思い出した。あの頃は元気だった。秋になってこんなに落ち込むなんて想像出来なかった。


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