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映像は戦争破壊を賛美はしない

「破壊の自然史」【セルゲイ・ロズニツァ《戦争と正義》】(2022/ドイツ=オランダ=リトアニア製作/105)


《戦争と正義》
連合軍による史上空前の大空爆とナチ・ドイツを断罪する軍事裁判——
過去の戦争に眼差しを向け現代に警鐘を鳴らす現代映画の最重要映画監督の一人、セルゲイ・ロズニツァが提示する2作のアーカイヴァル・ドキュメンタリー。
戦争を終結させるため多くの民間人を巻き込んだ大量破壊と、戦後処理のため人道に対する罪で個人を極形に処する裁判に見る《戦争と正義》とは?
カンヌ、ベルリン、ベネチアをはじめ、世界の映画祭で高く評価されているウクライナ出身のセルゲイ・ロズニツァ監督。日本では2020年に初めて紹介されてから現在に至るまで7作品が劇場公開されてきた。ロズニツァは2014年のユーロマイダンとロシアによるクリミア半島の一方的な併合以降、ソ連時代から続くロシアの強権的な政治や近現代の戦争をテーマにした作品を精力的に発表し、独裁主義だけでなく民衆の無関心が戦争に向かわせると警鐘をならしてきた。

「セルゲイ・ロズニツァ《戦争と正義》ドキュメンタリー2選」は、ロズニツァが「戦争」をテーマにした新作アーカイヴァル・ドキュメンタリー2作品の同時公開企画である。第二次世界大戦の終結と戦争責任を問う二つの「正義」に着目し、戦争における当事者の正当性ではなく、普遍的倫理観について考える。

セルゲイ・ロズニツァはドキュメンタリーを過剰に見せるのではなく、淡々と見せていく。予告編では効果音が入っているがそういうのも一切なし。ただナチスドイツの演奏会のシーンとかでクラシックを演奏する指揮者とオーケストラ、それに平和そうな観客がいるが、その後で空襲のシーンの破壊的凄さと言ったら。ドイツの空襲の酷さはヴォネガットがドレスデンで捕虜として体験したのが描かれているが、日本と違い石作りの教会やらビルが崩れている。その下敷きになった人を救出する作業とか大地震に会ったような酷さだった。そういうのはウクライナとかシリアの空爆の映像で見せられているのだから予想はつくのだが死体が映し出されるのがTVとの違いか?あと家を追い出された人のどこへ行くのかぞろぞろと歩く姿がなんとも言えない。その前に平和を楽しむ市民を見せているから。またヒンデンブルクの空撮とか。

それだけ酷い被害にもかかわらずドイツの将軍っぽい人が視察にくるとみんなアイドルを見るように集まってくるのだ。そんな酷い目にあっているにも関わらず。集団心理というものだろうか。そのあとに報復するぞとヒトラー?か演説していたけど、その後も悲惨な敗戦国の姿となるだけだった。

解説とかなく、ただ映像を流すだけなんだが(「観察映画」というジャンルかもしれない)、戦争の悲惨さはどっちがいいとかではなく伝わってくる。その前に兵器工場で爆弾とか飛行機作りの映像を見せたりして、けっして爆撃機がカッコいい姿では描かれてはいない。編隊を組んで夜の爆撃の凄まじさも暗闇で見えないだけに怖ろしい。


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