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「中国の香港」という映画になってしまった問題のテロップはカットして貰いたかった。

『少年の君』(中国内陸・香港合作映画-2019)

解説/あらすじ
新学校に通う高校3年生のチェン・ニェン。大学進学のためのッ全国統一入学試験を控え殺伐とする校内で、ひたすら参考書に向かい息を潜めて卒業までの日々をやり過ごしていた。そんな日々の中、同級生の女子がクラスメイトのいじめを苦に、校舎から飛び降り自らの命を絶った。少女の死体に無配慮に向けられる生徒たちのスマホのレンズ、その異様な光景に耐えきれなくなったチェン・ニェンは、遺体にそっと自分の上着をかけてやる。しかしそのことがきっかけで、激しいいじめの矛先はチェン・ニェンへと向かうようになってしまう。彼女の学費のためと犯罪スレスレの商売に手を出している母親以外に身寄りはなく、頼る者もないチェン・ニェン。同級生たちの悪意が日増しに激しくなる中、下校途中の彼女は集団暴行を受けている少年を目撃し、とっさの判断で彼シャオペイを窮地から救う。辛く孤独な日々を送る優等生の少女と、ストリートに生きるしかなかった不良少年。二人の孤独な魂は、いつしか互いに引き合ってゆくのだが…。

話題の中国映画『少年の君』を観てきました。ただ注意が必要なのは香港で制作されてそれが中国映画となっているのです。その複雑な状況がアメリカの第93回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートでしょうね。香港映画としての。

ヒロインの女の子が綾波レイなんです。実写版かと思うぐらい(絶対監督エヴァの影響を受けているはずです。制服とかエヴァのだもの)。今までのベスト1は『汚れた血』なんですけど、それを超えるかと思いました。ストーリー的には中国版「ハイティーン・ブギ」なんです(映画評論家の町山智浩さんは『ホットロード』と言ってました)、中国というより香港で作られたのが意味があると思うのです。

監督はあきらかに日本文化の影響を受けていますね。まあバブル時代の日本と今の中国は似たところがあります。学歴社会の一方で校内暴力やイジメ問題。1980~90年代の日本のもっと過激な姿を観ているようです。それはネットと監視社会にあるようです。

中国の学歴社会とイジメの問題に正面から挑んでいる物語。ヒロインの女の子がエリート高でイジメを受けるのですが、スラム街の不良をかばったことから仲良くなり、彼女のボディーガードになる。ヒロインをいじめる女子校生がこれでもかというぐらい憎たらしいのです。親が金持ちでエリート高のお嬢さんで(最近オリンピックで話題の歌手のようで)。

ある日たまたまその彼が警察のご厄介になっている時に酷いイジメにあって、スマホでイジメビデオを撮られるのです(実際にそのような事件があったようです)。そのイジメの主犯格の女の子が殺されて、少年が逮捕される。そのシーンは館内あっちこっちで号泣映画なのです。そしてどんでん返しも号泣な展開なんだですけどエンディングで中国当局の説明が入る。

最悪なエンディングです。最近流行りの最初のシーンに戻るのまだいいです。あろうことかこの映画の説明が入るのですね。最近はこのような事件は学校や警察で対策済みです、というような。まったく問題提起の映画なのに、最後でもう過去のことだみたいに。その編集の仕方がもろ中国当局のやり口みたいで反感を覚えました。エリート学生の管理教育からくるストレスが隠された暴力を生み出すという映画なのです。けっしてラストでハッピーエンドにはならない。それでいままでの感動がすべてチャラになってしまいました。

政治家答弁のようなテロップを流さなければならない中国映画界の締め付けを感じました。本当に残念な映画だと思いました。ただエンディングを観なければ素晴らしい映画なのかもしれないです。まずヒロインの女の子がすごくいい。



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