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ルソー『人間不平等起源論』

『人間不平等起源論』ジャン=ジャック ルソー(翻訳)中山 元 (光文社古典新訳文庫)

人間はどのようにして自由と平等を失ったのか? わたしたちは、フランス革命を導いたルソーの代表作である本書と『社会契約論』に繰り返し立ち戻ることで、国民がほんとうの意味で自由で平等であるとはどういうことなのか、どうすれば国民が真の主権を維持できるのかを、自分の問題として問い直すことができるはずである。格差社会に生きる現代人に贈るルソーの代表作。

ルソーの社会政治思想の入門書。『社会契約論』よりはわかりやすいと思うがそれでもやっぱ「野生人(自然人)」で躓く。仮説ということで実際に人間の初期段階で単独で生きていける「野生人」はいないと思うが社会性の中にすでに不平等が現れるという。社会的になる前の自然状態の人間は自己保存と他者(同類)への憐れみの情があるとする。それはホッブスの自然状態における人間は絶えず戦争状態にあるとする理論を批判した。ホッブスは所有欲という概念が入りすでに自然状態ではない。自然状態から社会状態の形成で所有という概念が生まれる。

ルソーの社会形成の四段階。「所有という概念の発生」孤立状態から離脱。「私有財産の発生」家族の形成。「固有言語の形成」地域社会の形成。「恐るべき戦争状態」鉄の小麦から文明の誕生し、労働と所有の時代から国家の形成。「私有財産と利己愛の誕生」から言語の誕生によって「美」の観念が生じる。美の観念は価値の差別化を図り、情念のうちでもっとも甘い恋愛が、人間の血の犠牲を求める。もっとも巧みに歌い踊る者を尊敬するという観念も生まれる。そこに嫉妬が生まれる。

悪徳の第一歩。そして道徳の誕生。宗教世界の誕生か?文明の成立。富める者と貧しい者の戦争状態から社会と法が生まれる。その解決は「社会契約論」へ。ルソーの「野生人」という概念はニーチェの「超人」に繋がると思った。単独者で生きていけるほど人間は強くなれない。(2018/11/19)

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