見出し画像

芥川の不安とは?

『三つのなぜ』芥川龍之介( Kindle版)

初出は「サンデー毎日」[毎日新聞社、1927(昭和2)年]。生前は単行本未収録であり、「芥川龍之介全集」第11巻に収録された。ファウストが悪魔に出会った理由、ソロモンがシバの女王と一度しか会わなかった理由、ロビンソンが猿を飼った理由という3つの謎について考察している。

芥川晩年の作というより自殺した年の作品である。『ファウスト』の話は第5幕で、それまで林檎(愛)という欲望を知らなかったのに、悪魔によって知ってしまったことから、錬金術のようなまやかしな人生を後悔するというような。シバの女王は奴隷と主人の関係が逆転する。愛の虜になるというような。ロビンソンも結局は堕落の道なのではないか。

人生堕落だったということなのか、「3つのなぜ」なんか普通は考えないで人はやっていくのに芥川龍之介だからその問いの虜になってしまったということなのだろう。

芥川は西欧の文明開化には疑問符の人だったから。それらは西欧からやってきた文学問題であり、西欧化の問題でもあるのかもしれなかった。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?