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道綱は母と父の綱なのか?

堀辰雄『かげろうの日記』

初出は1937(昭和12)年の「改造」。平安文学の「蜻蛉日記」を翻訳(逐語訳ではない)したもので、藤原道綱母の、夫を巡っての逡巡、愛憎が描かれ、女性の心の綾なるところを小説化している。近代的知性や感覚で、愛や死や生をめぐる問題を作品化している。「蜻蛉日記」の上と中に相当する内容で、大筋は一致しているが、最大の違いは短編小説として無駄の無い文章で、過不足なく書いている点である。

藤原道綱母『蜻蛉日記』上巻を現代語訳にアレンジしたものなのか?兼家との母の間で右往左往する道綱の辛さが原作以上によく出ている。結局は、山寺行きも兼家の気持ちを惹きたいだけの駆け引きだった。出家する気持ちは最初からなかったようだ。これを読んだから室生犀星は遺文を書いたのかな。そんな気もする。


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