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パリを横浜に見出す文学ガイドとして、想像力を刺激される。

『物語 パリの歴史 』高遠弘美(講談社現代新書)

どの街角を歩いても歴史に出会う街、パリ。その尽きせぬ魅力を物語風に活写する。第1部はパリの誕生から現在まで、2000年以上にわたるその歴史を30の章に分けて紹介。第2部は、パリの様々な横顔を連想風につづる。旅行ガイドにもおすすめ!

たぶんパリには行く予定も行ったこともないのだが、パリについてはすごく興味を持ち始めている。それは、主に文学のパリなのだが、最近プルーストやベンヤミンで開眼されたわけだった。

この新書の著者は、プルースト『失われた時を求めて』の翻訳者であり、興味を持って購入していた。すぐには読まないで積読状態だったのは、観光案内のような紹介が帯に書いてあったので、すぐには読まなかった。

ただここで書かれているのはパリの歴史から見た観光案内で、分類としてはパリの歴史エッセイの部類だと思う。自分の興味もパリのそんなところに、例えばユゴーやボードレールが描いた下水道が整備される前の悪臭漂い裏通りに入れば怪しい娼婦たちが巣食っているような19世紀のパリと表通りの華やかさ(プルースト的世界)をイメージするのだ(だから現在の観光地のパリには興味がない)。

それはベンヤミン『パサージュ論』の19世紀のパリの姿、そうしたパリを探っているように思えた。そして、それはパリの都市計画が日本の都市計画となって様々なところで見いだせると思った。例えば上下水道の整備は、暗渠として地下下水道になり、渋谷の開発計画に見出すというような。

特に横浜のみなとみらい開発は、パリの都市計画と重ね合うところが大きいと思うのだ。横浜の名所がそれぞれ小パリ化している。例えば山下公園は、関東大震災の瓦礫を埋め立てて建設された公園である。外人墓地、マリンタワー、中華街、山下公園、三渓園、ショッピングモール。

それらの近代化された横浜の風景は、パリと繋がっているように思える。第二部 「それぞれのパリ・私のパリ」ということも、そういうことだろう。あと文学よりも映画で描かれたパリというのは興味深いかもしれない。



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