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たまに中国の神話もいいかも

『詩経・楚辞 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典』牧角悦子 (角川ソフィア文庫)

『詩経』と『楚辞』は、古くから「風騒」と呼ばれ、多くの人びとが親しみ、学んできた詩集。『詩経』から、恋や結婚、悲しみ、怒りなどの心情あふれる歌を、『楚辞』からは、神に捧げる歌舞劇だったという壮大なスケールの歌を味わい、古代の人々のこころにふれる。子孫繁栄と五穀豊穣を願う神々への祈りの言葉から生まれ、抒情的歌謡に発展した中国詩歌。その原点であるふたつの詩集が、一冊でわかる!一番やさしい入門書。
目次
『詩経』(恋のうた;結婚の成就と破綻を歌ううた;嘆きと悲しみのうた;恨みと怒りのうた;神祭り・魂祭りのうた)
『楚辞』(九歌;離騒)

『詩経』

中国の古代詩だが黄河流域の『詩経』は素朴な民謡のようで、漢の時代に孔子によって解釈学として発展したとか(「儒教」)。

原典は説教的というより民話的で人が中心の民謡なのだろう。植物に託して歌うのは、和歌(『万葉集』の素朴な歌に近いかも)と同じような気がした。

桃が邪鬼を祓ったり妊婦の欲する食べ物だったり中国といえば桃の花というのは、そういう伝統があるのかと思った。著者の専門が『詩経』のようで『楚辞』よりも詳しく語っていた。

『楚辞』

楚は辺境の長江の国なのだが(黄河中心というような)、むしろこっちの神話の方が複雑で面白かった。楚という漢に滅ぼされた国だからなのか、そういう滅びの文化なのか、刹那的な愛の物語を感じた。それは屈原という悲劇を語るヒーローがいたからなのだ。屈原は漢代に作られたという説もある。

著者は『詩経』は歴史性もあり時代によって解釈が違うのも面白いという。中国は解釈学なのだ。『楚辞』はそれに対して余白の部分の空想を広げていくというような小野不由美『十二国記』みたいな神話を含んだ話。ギリシア神話に近いかもしれない。

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