弱さを見せるソンタグ
『死の海を泳いで―スーザン・ソンタグ最期の日々』リーフ,デイヴィッド/上岡 伸雄【訳】
ソンタグがアニー・リーボッツに撮られた写真のように死と毅然と対峙したのではなく、死に怯えていた様子が息子によって語られる。これはプライベートの部分であり公には見せなかったソンタグの一面であり、それは気のおけない家族だから見せた姿だと思うのだ(日記まで覗かれているのだから)。
ちょっと意外だったのはサイードと親友だったのに何故大江とのあのような論争になったのかを考えてしまった(ディベートという朝日新聞の要請でソンタグが大江健三郎に対して感情的になったように思えた)。それはソンタグにとって癌は死を脅かすもので克服した(意志の人ソンタグならでは)としても絶えず癌(死)が意識されていたと思うのだ。
この本にある最初の癌告知のあとの明るく振る舞う様子など無理しているような感じを受ける。その戸惑いを息子である著者もかたっているが、それは公の理論武装したソンタグの姿ではなく、限りなく人間臭いのだ。
また死についての著名人の引用など、癌=死の恐怖心といつも戦っていたのだろう。それはプライベートの中のソンタグの姿であり公でのソンタグは絶えず強く自分の思い通りにしなければならいと思っていた意志の人だった(またそれが出来た稀有な才能もあった)。そうした強さの中に人間的な弱さも見いだせるが、大好きなベケットの墓地に祀られたのは良かったのではないか(これはソンタグのためと言うより、ソンタグを知る人の供養としてだが)。
参考書籍
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