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コンゴで起きたことを知ることが重要

『シティ・オブ・ジョイ ~世界を変える真実の声~』(アメリカ・コンゴ/

2018)監督

戦争で荒廃したコンゴで、性的暴行を受けた女性のために設立された"シティ・オブ・ジョイ"。この場所で、被害者たちは少しずつ自我と自信を取り戻していく。

1992年にイギリスの同名作品からのタイトルなのだろう。「歓喜の街」。レイプ被害者の施設なのにと思うだろうが、レイプ被害者がこれから先を生きる道を示すには喜びが必要なのだ。彼女らは悲痛な姿で入ってくるから生きる意思をも奪われている。

コンゴのレイプが戦争のテロとして使われていると発言したノーベル平和賞を受賞したムクウェゲ医師が建てた女性解放施設。レイプ被害にあっても口を閉じないこと。「ヴァギナ」と言い続けること。それが恥ずかしいこととされ、口を閉ざしてしまう。自身のレイプ被害を告白することで、自立を促す。それはレイプ被害者を孤立化させないためであり、集団で立ち向かっていく声による闘いなのだと。最後は、笑いに変えるのだ。

コンゴのレイプ被害はボスニア戦争のときより非道いと知った。六ヶ月の赤ん坊がレイプされて死んでいくのだ。この事実に目をそらしてはいけないのは、それがコンゴの貴金属は電子機器に使われ、その多国籍企業は、ソニーやシャープなど日本の企業も多く関わっている。鬼子なんだ。経済活動という名の下で行われる蛮行。ケニアにはそれを取り締まる政府が機能しない。内戦状態であるからだ。それは先に見た自然を破壊するドキュメンタリーでも描かれていた。

多国籍企業の資源争奪戦が、内乱を生みだす。傭兵は貧しいものばかりである。彼らは生命の危険を冒しながら兵隊として隷属状態(突然ゲリラに襲われ少年兵になる者)なのである。大金が得られるわけでもなく、彼らの目的が女になる。レイプが余興として、家族の目の前で繰り広げられる。夫は妻を追い出し、兵隊になる悪循環なのだという。

そんな現実なのに、この施設の女たちは明るい。自身のレイプ被害を告白しながら、それを女たちで分かち合う。そして護身術や心のケアをしながら自立支援の道を切り開くのだ。アフリカの女性はすぐダンスをするので、そんなところも暗くはない。現実は暗いんだろうけど。少し勇気が出る映画でもある。



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