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谷崎潤一郎もびっくり「刺青男」

『皮膚を売った男』(チュニジア/フランス/ベルギー/スウェーデン/ドイツ/カタール/サウジアラビア/2020)監督カウテール・ベン・ハニア 出演ヤヤ・マヘイニ/ディア・リアン/ケーン・デ・ボーウ/モニカ・ベルッチ/ヴィム・デルボア

解説/あらすじ
主人公サムは、当局の監視界にあり国外へ出られなくなってしまう。海外で離ればなれになってしまった恋人に会うためなんとかして出国したいと考えていた彼は偶然出会った芸術家からある提案を受ける。それは、背中にタトゥーをし、彼自身が”アート作品”になることだった…。芸術品となれば大金を得ることができ、展覧会の度に海外にも行ける。恋人に会うためオファーを受けたサムだったが、次第に精神的に追い詰められてゆく。高額で取引されるサムを待ち受ける運命とは…。

カウテール・ベン・ハニアはチュニジアの女性監督。今年一番の映画を選んだらこれになるだろうな。ベスト5入は確実。シリア内戦を織り込んで、表現(芸術)と政治の間を潜り抜ける男の物語。現代美術で人体に絵(入れ墨)を描いてそれを芸術作品として、逃亡シリア人を海外に逃がす契約をする。

それは魔神(芸術家)の「魔法の絨毯」(作品)で海外脱出という『アラビアン・ナイト』を踏まえている上に『ファウスト』のメフィストフェレスとの悪魔の契約なのだ。そのあたりの文芸映画の力業をアラブの映画で見るんんてちょっと考えていなかった。そのぐらいの映画じゃなきゃ公開されないということだ。

シリア逃亡犯に入れ墨で「ビザ」を描きそれを芸術作品として、海外に運び出す。芸術作品だから美術館に展示される。そういう問題提起をする作品なのだ。

男はシリアで結婚を約束した彼女がいたのだが突然の逮捕で逃亡しなければならなくなった。恋愛劇でもあるのだが、その彼女はシリアの外交官と結婚してしまい、政治的も三角関係でも騒動を起こしていく。どうなるかは、なかなか展開が読めない。美術館に作品として展示させるのは人権侵害とか人権団体が抗議したり、金のために魂を売ったとかシリアではSNSで炎上したり、双方から攻められる。

遣りての女マネージャー役のモニカ・ベルッチの存在とか面白かった。恋愛関係にはならないのだが、マネージメントのプロという感じで芸術家と社会との間の問題を対処していく。

オークションで値段が付けられていく( バンクシーまでもオークションにかけられるのだから、当然か?奴隷市場だ。)資本主義社会と彼が取った行動が見事だった。結局シリアに戻ることになるのだが、その展開も意外だった。シリアでは逃亡犯なのだから。最後の結末の付け方で監督は悩んだと思う。悲劇にするか?一応ハッピーエンディングの結末なのだが、最後はちょっと複雑な結末。

実際に人間の背中に入れ墨をした作品が美術館で展示されたそうだ。その作品からシリア人の逃亡ストーリーを組み立てた脚本も見事だ。

“皮膚を売った男”は実在した!映画化のきっかけとなった、型破りな芸術家の正体やシリアの内実を知る(MOVIE WALKER PRESS)
#Yahooニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/712397cf20e94076b95d824223f3e1d258340a60



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