故郷は遠きにありて思ふもの
『658km、陽子の旅』(2022年/日本/カラー/2:1/1h53/DCP)監督:熊切和嘉 出演:菊地凛子、竹原ピストル、黒沢あすか、見上愛、浜野謙太、風吹ジュン、オダギリジョー
菊地凛子で思い出すのは映画『バベル』よりもロッテのCMだった。今それを見ながら想像するなら、負けてしまった菊地凛子がこの映画では描かれていた。
現実はCMタレントが女優賞を撮るまでになった映画なのだが、映画のストーリーは父と喧嘩して故郷を飛び出し錦が飾られない失意のうちに父の葬儀に出席するという映画だ。途中親戚の一家の車からはぐれて高速インターでヒッチハイクをしながらなんとか父親の出棺にたどり着くというろーど・ムービー。
ロードムービの中にある単純な展開の中で父娘の絆というテーマが途中福島の絆を失ってしまった街を見せながら展開していく感動ストーリーで、ただ菊池凛子の演技に釘付けになってしまう。
しかしながら後で冷静になって考えると故郷がないものはどうなんだろうかと考えてしまったときに、ヒッチハイクまでして必死に帰ろうとする心持ちは多少ウザく、どこまでもファザコンなんだと思ってしまった。
そんな中で竹原ピストルののほほんとした父親像は良かったように感じる。ロードムービーとして、お気楽ヒッチハイカー、そういう者を食い物にするフリーライター、福島の離散家族の夫婦、素朴な田舎の若者の感情、そうした情緒に触れながら故郷を想うという映画なんだが。
まあ、この映画のような故郷はすでに失われているからそれは彼岸のように美しく描かれているのだと思った。「故郷は遠きにありて思ふもの」かな?
そうだ。ジム・オルークの作曲した歌が素晴らしかった。そうか『ユリイカ』もジム・オルークだったと思い出した。青山真治監督のオマージュでもあるかな?
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