一次資料で読み物としての面白さは解説書を
『陸軍登戸研究所の真実』伴繁雄(普及版)
映画『陸軍登戸研究所』というドキュメンタリーを見て興味があって読んだが、ほとんど映画を超えるような真実はなかった。ただ、これは一次資料というものなのか、映画はこの資料を元にインタビューをしていたに違いない。
登戸研究所が陸軍中野学校の特務機関として、諜報道具(スパイ用器具)や細菌兵器、偽札を作っていたことを図表や繊細な記録によって明らかにしていく。このあたりはスパイ映画の資料のようでもあり、映画『陸軍中野学校』を見るとよくわかるような。
この本でも最も興味深いのは風船爆弾の記録かな。ほとんど成功はなかったのだが、米軍に脅威を与えられたと自画自賛している。それに細菌を載せて病原菌を撒くということも。東郷大将のアメリカが報復として稲を燃やすかもしれないということで中止になったという。アメリカもそれを察知してワクチンとか作っていたとか。
それら実験段階で犠牲になった者も。あるいは細菌兵器での中国人を使った人体実験のことも書かれていたがそれほど詳しくはない(その事実が明らかにされることが需要だったのだ)。731部隊のことも明らかにされるが、森村誠一『悪魔の飽食』ほど詳しくはかかれていない。
戦争末期の物資がない中での苦労(レーダーシステムはイギリス軍より十年おくれていたとか)や、それらを隠蔽するために廃棄しなければならなかったことも。映画では最初はただ埋めるだけだったのだが、それはすぐバレるだろうと焼却処分にするが燃やすのに苦労したとか。まあ米軍はその秘密も知ることになり以後の人材と共に戦争で活用するのだが。
読み物としては元研究員ということでプロではないので事実の羅列だけで、どう考えるかとかはあまり書かれていない。その事実があったということだけを明らかにするのは貴重な資料となったのだと思うが。
それらの研究が戦後の日本の産業になっていくのも事実で、映画では米軍の戦争協力ということで戦犯にはならなかったという事実も明らかにしている。
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