マガジンのカバー画像

源氏物語

79
源氏物語の感想など。与謝野晶子訳Kindleから。
運営しているクリエイター

#読書感想文

源氏弦楽四重奏曲の激しさ

『窯変 源氏物語〈9〉 若菜下 柏木』橋本治 (中公文庫) 「若菜下」「柏木」と柏木メインだが…

やどかり
11日前
17

『源氏物語』から疎外された光源氏の小説

『窯変 源氏物語〈8〉 真木柱 梅枝 藤裏葉 若菜上』橋本治 (中公文庫) 真木柱 原作が面白す…

やどかり
1か月前
10

ともづな(家)に繋がれる欲望

『新源氏物語 霧ふかき宇治の恋(上)』田辺聖子 (新潮文庫) 大君がそこまで薫を拒絶するのは…

やどかり
1か月前
8

「世界文学」から「現代文学」への『源氏物語』

『源氏物語―A.ウェイリー版〈3〉』毬矢まりえ+森山恵姉妹(日本語訳) 『雲隠』の帖が削…

やどかり
1か月前
17

ダース・ベイダーとしての光源氏の老いの世界は喜劇となっていく

『窯変源氏物語〈7〉胡蝶螢常夏篝火野分行幸藤袴 』橋本治(中公文庫) 玉鬘十帖のうちの7話。…

やどかり
1か月前
6

『源氏物語』の「もののけ」は当然の感情である。

『源氏物語 A・ウェイリー版2』紫式部 ,アーサー・ウェイリー(翻訳),毬矢 まりえ(翻訳),森山恵…

やどかり
2か月前
16

光源氏の手はずとしての娘たち

『窯変 源氏物語〈6〉 朝顔乙女 玉鬘 初音』橋本治 (中公文庫) 「朝顔」が結婚しない女のエピソードから「乙女」「玉鬘」では女の幸せは結婚することであるという物語だが、男親に取って娘を嫁がせる幸せというような話になっていく。そして光源氏は一人だけではなく四季折々の妻を得るわけだが中心は次世代の息子の話になっていく。一度目は悲劇として、二度目は喜劇としてというようなコメディ色が強くなっていく。面白いのは惟光の息子と夕霧の関係で、惟光の息子も夕霧同様要領が悪い。結果的に光源氏

光源氏はかくも美しきダークサイドの王なのか?

『窯変 源氏物語〈5〉 蓬生 関屋絵合 松風 薄雲』橋本治 (中公文庫) 各帖がページ数以上に長…

やどかり
2か月前
14

窯変は男たちの「源氏物語」

『窯変 源氏物語〈4〉 花散里 須磨 明石 澪標 』橋本治(中公文庫) 須磨 葵の母の大宮と弘徽…

やどかり
3か月前
21

もののけと無常観の「源氏物語」

『新源氏物語(下)』田辺聖子 (新潮文庫) 他の方のレビューもある通り一番読みやすい(漫画は…

やどかり
3か月前
19

雅楽がバロック管弦楽になる「源氏物語」

『源氏物語 A・ウェイリー版1』紫式部 (著),アーサー・ウェイリー(翻訳),毬矢 まりえ(翻訳),森…

やどかり
3か月前
22

六条御息所と呪術廻戦

『窯変 源氏物語〈3〉 花宴 葵 賢木』橋本治(中公文庫) 『葵』は六条御息所の「もののけ(怨…

やどかり
3か月前
13

近江の君のスピンオフ・ドラマが観たい

『新源氏物語〔中〕』田辺聖子(新潮文庫) 須磨から帰還した光源氏は、さらに大きく成長して…

やどかり
3か月前
10

ダースベイダーとしての光源氏

『窯変 源氏物語〈2〉 若紫 末摘花紅葉賀』橋本治 天皇が太陽ならば光源氏は月。さらにその天皇の妻(義理の母)を愛してしまったのだから、欲望のはけ口は他にむかうしかなく、それが月影となって当時の女たちを照らす物語だったのが、月そのものの影の部分、つまり暗黒光源氏として描いている。闇堕ちしたダースベイダーかと思ってしまった。「若菜」でも「末摘花」でも本人は動かない。自分の思い(欲望)を伝えるだけ。それに右往左往する惟光だったり大輔の命婦だったりする。従者は常識人であるが王の命