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#青ブラ文学部
マッチ一本歌事のもと(第五話)
休みん俳『勝手に企画』
『同じ月を見上げて』
『マッチ一本歌事のもと』
朝、目覚ましより先に一通のメールで起こされた。上条フミコからだ。そのメールを読んで、おれの眠気は一気に吹っ飛んだ。
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今日は白百合女学園との対抗歌会です。五人の代表者によって短歌を詠み、
マッチ一本歌事のもと(第四話)
上条フミコの歌論は、「もだえ神」の巫女になることだ。まず「もだえ神」というのは俺だったら寺山修司。俺がすべてを捧げられる人物(神)をイメージする。そしてそれを世界に布教したいと行動するのが「もだえ神」に仕える巫女としての役目だという。だから「もだえ神」にとってこの世界は悪魔の棲む世界なんだ、と上条フミコの論理。
そして、上条フミコの「もだえ神」は中条ふみ子となる。その方法だが「本歌取り」という和
マッチ一本歌事のもと(第三話)
上条フミコの家はスタジオを兼ねたビルだった。けっこう金持ちの娘なんだと思ってしまった。応接間なのか骨董品が並んでいるような部屋で瓶コーラの自動販売機があり、コインを入れたフミコに何を飲むか聞かれた。セルフだからというのを、セフレと聞き間違えてドキマギする。
俺は彼女のコーラも持たされ階段を上がっていくと彼女の部屋に入った。そこは必要最低限のものしかない閑散とした部屋だった。白い壁、白い天井。白い
マッチ一本歌事のもと(第二話)
「やっぱ女史の歌は奇抜ですね」と眼鏡男が言う。
「上句でいにしえの日本に思いを馳せながら最後で現代っ子なのよね」とデブ女が答える。こいつら漫才師なのか?男の方はいまどき牛乳瓶の底のような眼鏡で、女は派手な着物を着ていた。正月なのはわかるが、まだ成人式でもないのに。
「アイツは、柳棚国男。おっべか野郎だわ。アイツまだ童貞よ」そんな上条ふみ子の言葉に俺はドギマギした。俺もまだ童貞だ!それよりお前はも
マッチ一本歌事のもと(第一話)
寺川修司はマッチを擦っていた。俺は父の本棚からこぼれ落ちた本の見開きページにこの魔法のコトバを見つけたのだ。さっそく母に「マッチはないか?」と問う。百円ライターじゃいけないのだ!
「燐寸(マッチ)なんてあったかなぁ。あなた放火でもする気?未成年は煙草は駄目よ!」
「マッチというものを擦ってみたくなったんだ。この本………」と俺は父の本を母に示した。
「寺山修司?懐かしいわ。それでパパを勘違いしたの