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最高のおもてなしをしても、リピートされないのはなぜ?

お客さまと打ち合わせする中で、こんな質問をいただくことがあります。最高の接客をしているのに、お客様がリピートしてくれない…というものです。こういった質問には、リピート来店とは、円満な夫婦のコミュニケーションと同じですと答えます。

リピート客の重要性

店舗運営にとって、リピーターの存在は非常に重要です。

業種にもよりますが、売上の5〜8割はリピーターによって生まれていると言われています。そして一から新規のお客さまを集めるより、リピーター増やす方が、コストをかけずに取り組むことができます。

以上の理由で、店舗は”いかにリピート来店を増やすか”という課題に取り組むことが必須課題となります。

ではどういった取り組みが、リピートしてくれるお客様の獲得につながるのでしょうか。

いかに感動させるか、という誤解

日本のサービスは過剰だと言われます。これはお客様は感動のおもてなしを求めてお店へ来店しているのだ、という勘違いから生まれています。

わたしが住む名古屋市では、とあるレクサスディーラー店の逸話が有名です。

それは、お店の前をレクサス車が通ると、店舗入り口の案内スタッフがかならず、そのレクサス車へむかってお辞儀をするというものです。

当然、レクサスドライバーからすれば、気づきにくいことですし、そのレクサスをそのお店で購入しているとも限りません。しかしスタッフは健気にレクサスが通るたびに頭を下げ続けていました。

とあるレクサスオーナーがそのことに気づき、店舗へ激励の電話をしたそうです。するとその感動の接客が話題になり、お店は売上が地域でNo.1となった。というエピソードです。


こういった美談ともいえるおもてなし逸話は、確かに人を感動させます。そして人を動かしたり、売上にも貢献したりするかもしれません。

しかし感動とは、やがて薄れていくものです。そして再現性もありません。

感動よりも快適・ラクさが大事

近年、人は「満足度(Satisfaction)」の高いお店ではなく「快適さ・ラクさ(Effortless)」の高いお店に愛着をおぼえる、という説が提唱されました。

これは2018年に米のマシュー・ディクソンという人が実施した調査によるものです。10万人を対象に、愛着をもっているブランドと、その理由について調査したものです。

それによると、感動的なおもてなしよりも、いかに快適であるか、いかに緊張せず気楽に行けるか、いかにサービスや商品にストレスがないか、というEffortlessの感情こそが、ブランドの愛着に寄与している、ということなのです。


夫婦関係と接客は似ている

だれしも若い頃にドキドキする、刺激的な恋愛相手を求めるものです。派手なプレゼントをしたり、大げさなサプライズをして、相手の感動を求めます。

しかし年齢を重ね、生涯のパートナーをいかに選ぶか、という視点になったとき、今までのように刺激的な相手ではなく、毎日顔を合わせてもドキドキしない、でも安心感があって、一緒にいると落ち着く相手こそ相応しいのでは?と考えるようになります。これもいわゆるEffortlessの感情と同じですね。

円満な夫婦関係を継続することは、お客様とのお付き合いと似ていると思います。相手のことをさりげなく思いやりながら、でも気を遣すぎない適度な距離感でコミュニケーションする。持ちつ持たれつな関係性の維持こそ、長く続く関係性の秘訣です。そしてそれは、接客やおもてなしにおいても、同じなのかもしれません。

常連になるということ

お客様にとって、お店の常連になるということは、下手したら一生通い続けるかもしれないお店を選ぶことです。そんな時にお店から過剰な接客やサプライズを仕掛けられ続けていたら、行くだけでとても疲れてしまいそうです。

お店へ行くだけで疲れてしまうのであれば、それは一体何にお金を払っているのでしょうか。疲れてしまう関係は、いつか破綻してしまうものです。

お客様は冷静で残酷なものです。そんなに簡単に感情を動かされたりしませんし、無駄なことにお金を払ったりもしません。

商売も、人間関係も、相手はつねに人なのですよね。自己満足な感動に走るのではなく、しっかりとお客様のことを気遣うことを忘れずにいたいものです。


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