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「地底アパートの最後の訪問者」発売にともないシリーズを振り返って

2016年から続いていた『地底アパート』シリーズがついに完結となる。
シリーズ開始当初は、仕事が軌道に乗り始め、書店員をやりつつ多忙な日々を過ごしていた。
憧れのポプラ社さんとご縁が繋がって嬉しかった半面、あまりにも忙殺されていて、半分脳が溶けた状態で執筆したのが『地底アパート入居者募集中!』である。

当時、お店モノの小説の流行の兆しがあり、自身も既に『幽落町おばけ駄菓子屋』『幻想古書店で珈琲を』『深海カフェ海底二万哩』とお店モノを手掛けていたため、今度の舞台はお店ではない場所にしたかった。
流行のジャンルは埋もれやすいというデメリットを売り場で感じていたし、ポプラ社さんの独特なレーベルカラーで新たな挑戦をしたかったのだ。

その結果、マスコットキャラクターは恐竜(ヴェロキラプトルの幼体。当初はジュラシックワールドも公開されていて、ラプトル需要は高いと見込んでいた。史実では羽毛説も有力になったのでモフモフである)にし、主人公はゲーム廃人、メフィストフェレスや未来から来たイケメン型アンドロイドやマンモスが出る、おもちゃ箱をひっくり返したような物語になった。

何故、そんな仕様にしたかというと、ポプラ社さんは児童書のイメージが強く、とても若い読者さまのもとへ届けることが出来るのではないかと思ったからだ。童心を呼び起こし、若い読者さまが楽しんでくれそうなものを詰め込み、思いつく限り大胆な展開にしてみた。

2巻ではメフィストの昔の相方であるファウストを登場させ、池袋で恐竜が暴れまわるというトンデモ展開に。
3巻では、ターミネーター2よろしく、未来から来たアンドロイド同士が対決する話だが、最終的に池袋でロボバトルが始まる。

4巻では、チバニアンが正式決定した(この時は「しそうだった」かも)喜びのあまり、人生の大半を千葉で過ごした私は池袋に氷河期を到来させ、最終的にはチ〇バくん的な怪獣を暴れさせてしまった。
5巻は、かつてドラえもんの映画を毎年見に行っていた時のことを思い出しつつ、地底王国を舞台にまっとうな(当社比)冒険物語を展開した。

それにしても、どうしてこんなに池袋が酷い目に遭うのか。
それは、蒼月にとって身近な町なのと、知名度が高いからである(ひどすぎる)。

とにかく、こんな悪乗りと無茶ぶり満載なシリーズをOKして下さった担当編集さん、毎回ポップで素敵なカバーイラストを描いて下さったserori先生には心よりお礼を申し上げたい。もちろん、関係者の皆さまにも!
大変なこともあったけれど、振り返ってみると楽しいシリーズだったなと思う。

「とても若い読者さまに届けたい」という気持ちは実ったようで、ベネッセさんの『まなびライブラリー』でも好評だそうで、ハードカバーの超豪華な図書館版も作って頂けた。
頑丈な本を図書館に置いて頂けるというのは本当に光栄で、完結した後も、地底アパートは新しい読者さまとの出会いがあるのだなと心が躍る。
唯一気になることといえば、次世代を担う読者さまにとっての初蒼月作品が、最もトンデモないシリーズだということか……。

さて、完結巻はついに一葉達が宇宙に行く話となる(本当だよ!!)。
最後は(主人公達を)派手に打ち上げるので、楽しんで頂けると幸いである。
直接的な名前は出ていないが、他シリーズからのゲストキャラクターもいるので、他のシリーズをお読みの方は楽しめるかもしれない。廃ゲーマーVSリア充の仁義なき戦いが始まる。

また、地底アパートは完結となるが、ポプラ社さんとは新しいナニカがアレするかもしれないので、楽しみにして頂けると幸いだ。


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