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(3)愛知妖怪奇譚 甘酒の災禍 ー不二先生の処方箋ー

「出雲さん、お清めのご協力をお願いします」
「はい、もちろん。それにしても甘酒地蔵尊は初めて聞きましたが、素敵なお地蔵さんですね。私も娘を連れてお詣りに行ってみたいです」
 この人は何も変わらない。昔と同じ、好奇心と信仰心が入り混じった明るく不思議な性格のままだった。きっと先程見た娘さんも世代を超えて継承していることだろう。
「出雲さん……厄払いは観光ではありませんよ?」
「不二センセイ、知ってます。私も最近ちょっと咳が出るんです」
 ペロッと舌を出した。咳が本当かどうか知らないが、甘酒地蔵尊のお詣り自体は止める理由も全然なかったので、先生は一言「寒さには気をつけて」と静かに結んだ。

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