誕生日にまつわる思い出
みなさんはInstagramをされていますか?私はアカウントを持っていますが、一度も投稿したことがありません。友人や気になる人をフォローして、観る事を楽しんでいます。
最近のお気に入りはアドベンチャーワールドの公式Instagramでアップされる、ジャイアントパンダ良浜とその赤ちゃんの成長の様子です。この世のかわいいが凝縮されてるー。
先日Instagramを見ていたところ、検索画面のトップに工藤静香さんが可愛い大きな犬と戯れあっている動画が、何故かレコメンドされていました。
クリックしてみると、どうやらワンちゃんがお誕生日のようです。嵐を起こして全てを壊すと息巻いていた工藤さんが、柔らかい笑顔でお誕生日ソングを歌っています。
ハッピーバースデートゥーユー。
私はふと、前回の誕生日を思い出しました。
同じ季節生まれの後輩と私はある仕事の本番を迎えるために、遠方へ1週間程の出張を予定していました。
「aotenさん、私、出張期間中に誕生日なんですよねっ!」
ニコニコ笑いながらそう言った後輩の言葉を聞いて、彼女の誕生日と私の誕生日がちょっと近いという、数年前に交わした会話を思い出しました。
「ああ、ほんまやなー」
もはや私の歳になると誕生日を祝ってもらう事へのこだわりもないですし、会社の仲間同士でプレゼントをもらっただのあげただのと、気を遣うのも嫌なので自分の誕生日はもとより、他の誰の誕生日もあまり気にしていませんでした。
私はその堂々たる誕生日宣言を聞いて、悩みました。
これは、プレゼントを買うべきだろうか。
この堂々たる宣言は、どういう意味だろうか。
出張先で一緒に過ごすことになる私に、何か期待しているのかもしれない、いやそうじゃないのかもしれない。
聞いたからには誕生日に大きな仕事をやり遂げる彼女を労ってあげたい。しかし、そうなると他の後輩には何もあげない事になるが、その不公平感はいいのか。それに私がプレゼントしたら、逆に気を遣わせるのではないか…。
さっさとプレゼント用意しちゃってー。
うじうじと悩み、プレゼントを買う事にしました。お祝いしてあげたいという気持ちがあるなら、それでいいじゃないかと思ったのです。
以前マスカラが欲しいと言っていた事を思い出して、ちょっと良さげなマスカラにしました。
出張先に入った後も最終の準備に追われながら、無事初日を乗り越えた日が彼女の誕生日です。その日の夜は『初日お疲れ様でした、最後まで頑張りましょう』という意味合いを込めて、仲の良い関係者で食事に行くことになりました。
「Aさん今日誕生日らしいですねー」
「そうなんですー!」
「おめでとうございまーす」
会食中関係者にお祝いの言葉をかけてもらい、キラキラした笑顔で笑う彼女。すっかりリラックスした表情には、とにかく初日を無事迎えられた事への喜びも感じられます。中にはちょっとしたプレゼントを用意してくださる方もいて、本当に嬉しそうです。
今日を迎えるまでに、ここにいる仲間と時にぶつかりながら信頼関係を構築し、たくさんのプレッシャーや困難を乗り越えてきた、そんな彼女に相応しい誕生日のような気がしました。
そして、私は感慨深い気持ちでその眩しい光景を見つめながら、誕生日プレゼントを渡すタイミングを完全に失ってしまった事に気がつきました。
あれ。
いつ、渡そう。今でしょ。(相変わらずギャグ古め)
関係者の中で唯一彼女と同じ会社の私が、今このタイミングで「はい、これっ。おめでとう!」とみんなの前で渡すのもおかしい気がするし、しかも絶対プレゼント用意してなさそうな私が急に渡すのも、ちょっと怖くないか?
そう考え出すとなんだかプレゼントを渡す事が、とても恥ずかしくなってきたのです。
刻々と時間は過ぎていきます。
これはもう別れ際に渡すしかない、さもなくば持ち帰るしかない。
私は、渡さなければというプレッシャーを抱えながら、同じホテルに宿泊するみんなと帰路に着きました。
「お疲れ様でーす」
「引き続き明日からもがんばりましょう!」
ホテルの1階ロビーで解散し、私と彼女は同じフロアの隣同士の部屋なので、2人でエレベーターに乗り込みました。
「aotenさん、色々とありがとうございました!明日からまた頑張ります!」
「うん、ここまでよく頑張ったやん。ひとまずお疲れ様でした。あ、そうそう(忘れてた)」
ちょっとかっこいい先輩風に労った後、いかにも平静を装いながらカバンをガサゴソとあさり、
「はいこれ、おめでとう」
とサラッと渡しました。
鳩が豆鉄砲食らった顔ってこういう感じかな。それとも西川きよしかな。
目をまんまるにして、えっという感じで私を見た後、悲鳴にも似た声をあげて喜んでくれました。
「えーっ!!!!いいんですかー!!!めっちゃ嬉しい!!!ありがとうございます!!!」
「いやっ、別に、そんな、大したもんじゃないけど。じゃっ、また明日」
ガチャ、バタン。
ふぅ、渡せた。
何あの素直な喜び方すごい。
というか、後輩にプレゼント渡すだけでこの空回り感。
とにかくもうサラッと渡したかったのに、別れ際に渡すことによってもはやタイミング見計らってる感じ。「あ、そうそう(忘れてた)」って絶対忘れてないし、しかもちょっとぶっきらぼうな渡し方になってしまって、この人もしかして恥ずかしいんかな?ってなってる。
捻くれた感情にふりまわされながら、まぁでも喜んでくれて良かったのかな…と自分を納得させました。
そしてそれから数週間後のことです。
「aotenさーん、お誕生日おめでとうございまァァァァァッス。えっと、誕生日、今日?でしたっけ??すみません大体の日程しか覚えてないんですけどー!笑」
いや、ちょ、声デカい。
会社に出社するやいなや、私のデスクに歩いてきて堂々とプレゼントを渡し、しかも、私の誕生日は詳しく覚えてないというアバウトさを全力でぶつけてくるではないですか。
あっけに取られながら、その飾らぬストレートさになんだかもう嬉しくなって、そのまま素直に、誕生日は1週間前でしたという事実と、とても嬉しいという気持ちをきっちりと伝えました。
プレゼントはとても可愛いヘアアクセサリーでした。
正直なところそろそろショートヘアに戻す予定だったのですが、しばらく伸ばし続けることにして、そのまま今もロングヘアを保っています。
#日記 , #エッセイ , #誕生日 , #ハッピーバースデー , #後輩 , #誕生日プレゼント , #ギャグ古め
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