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風が強く寒い日の一幕、ちょっとした話

先日とても風が強く寒い日が何日か続きました。
とにかく外出したくないのでステイホームを決め込んでいたのですが、とうとう冷蔵庫の食材が尽きましたので、意を決してLIFEへ向かう事にしました。

風速8メートルぐらいはあるんじゃないかという向かい風の中、いつもなら徒歩15分で行けるLIFEに25分ほどかけてゆっくり歩いていきました。道すがら、自転車が倒れているのをいくつも見かけ、その風の威力をますます感じずにはいられません。

私はコートのポケットに手を突っ込み、前のめりになってえっちらおっちらと歩いていました。これほどの向かい風なら帰り道は追い風でさぞかし楽だろう、そう思って頑張ったのです。

LIFEに到着し、しばらく来なくていいようにある程度の食材を買い込み、よしこれでいいぞとリュックに詰めてお店を出ました。

驚くほどの向かい風でした。

風向きが変わったのでしょうか、私はえーっと驚いて、こんな冗談みたいなことがあるのかとまた向かい風に向かって歩き始めました。まるで我が人生のようです。

背中には重たい食材を背負っているので、むしろ行き道よりハード。
ほんまにしんどい。そう思ってふと空を見上げると上空20mぐらいでしょうか、スズメより2まわりほど大きなサイズの鳥が、風に身を任せて飛んでいました。

スイー、パタパタパタ。

スイー、パタパタパタ。

この寒空の中、風に争わず気持ちよさそうに飛んでいるその姿を見て、私も風に身を任せてみたいなぁと歩を止めてみたものの、そうすると間違いなく家に帰れないので、向かい風に向かって歩くしかありません。

厳しい風の中マスクは暖かく、反対に外気に晒されている目元が驚くほど寒い。

あまりの寒さに眉間に皺が寄り、自然と険しい表情になっているのがわかります。社会人生活を長く送っているとさまざまな困難にぶち当たりますが、その時ですらこれほどの険しい表情はした事がないと思います。私は眉毛が濃いので、もしかすると眼元だけならゴルゴ13に見えているかもしれません。

ああ、本当に寒い。
マイナス60℃にもなるブリザードの中、たった1つの卵を2ヶ月以上にもわたり、何も口にせず温め続けるコウテイペンギンってすごいな。そんな事を考えながらようやく家に着く頃には、身体が芯から冷え切ってすっかり体力も消耗していました。

扉を開けてリビングに入ると、ホットカーペットを敷いたソファーの上で、ホカホカになって寝ていた我が家の猫ちゃんズが、眠そうな顔でこちらを一瞥しました。

「あれ、買うてきたんか」

「えっ、あれって何ですか?」

「あれやん、もう今朝在庫切れたやろ」

「…ハッ」

「チッ。あれなかったら明日の朝、発狂すっぞ」

私は、毎朝猫ちゃんズにあげている『チャオちゅ〜る(まぐろ)』の在庫を、その日の朝にうっかり切らした事を思い出しました。いつもはAmazonで注文しているのですが、今から頼んでももう明日の朝には間に合いません。

以前たまには味を変えてあげようかなと親切心で買った、『チャオちゅ〜る(ささみ)』に一切口をつけず、そのまま無力化しているそれをしれっと代用しようかと思ったものの、絶対無理だと諦めました。

たかが『チャオちゅ〜る(まぐろ)』1日ぐらい無くたって、と思いたいのですがアレが無い時の猫ちゃんズたるや鬼の形相で荒れ狂い、私が行くとこ行くとこにネバーギブアップの精神で着いて回ってくるので、それを我慢するか今日もう一度寒い中スーパーへ向かうかの選択となると、後者を選ぶしか私の生きる道はありません。

NO『チャオちゅ〜る(まぐろ)』 NO LIFE.

私はまた家を出て、今度は追い風方向にある小さなスーパーへ『チャオちゅ〜る(まぐろ)』を買いに出ました。

帰りはもちろん向かい風でした。

風向き変われよ、と思いました。

#日記 , #エッセイ , #暴風 , #寒い日 , #猫 , #チャオちゅ〜る , #コウテイペンギン , #向かい風

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