夜行バスで東京に向かうことが、唯一の希望だったあの頃
高校を卒業してもなお、私は地元に残っていた。
実家から大学に通い、これから必要になるであろう資金を貯めるべくバイトに明け暮れていた。
地元では周りの目を気にして、「男には興味がないサバサバしたボーイッシュな女」を演じていた。夢のキャンパスライフには程遠く、大学生活に楽しみが見出せなかったため必要最低限しか大学には行かなかった。
手術や男性ホルモン投与は、地元を離れてから始めようと決めていた。いちいちカミングアウトするのも億劫だったし、自分の過去を誰も知らない場所で、一から