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ルドン展のはなし。


これは2013年、ルドン展へ行った話。
地元の美術館で開催されていた。
ルドンに興味があったので、とても良いタイミングだった。

絵画展そのものは幾度か見に行った事はあったけれど、念願の展示を観るというのは初めてだったので、一人で行ってこれまでで一番時間をかけて観た。

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静岡市美術館は、ビルに入っているだけの小さな美術館だけれど、館内がシンプルな白である事や、ポスターやフライヤー、キャッチコピーなどの言葉がいつも相応しく美しくて大好きなところだ。

作品紹介の文は、情報解説に特化している資料集のようなものも多いと思うけれど、ここでやる展示はいつも、解説者の愛や感性から書かれているようなものが多くて、それを読むのも好きだ。

ルドン展に掲げられたのは、「私は色彩と結婚しました。もうそれなしで過ごすことはできません」

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展示の構成や言葉もとても良くて、黒の時代が続いた先に、鮮やかな色の絵へ昇華させたのを目にした時は、そのフロアで脚を止めるほど感動した。

ルドンの空の色は鉱石によく似ていて、とてもきれいな煌めきをしていた。

特に気に入った絵は、
青と白と金の神々しい色彩の「神秘的な騎士、あるいはオイディプスとスフィンクス」
空の繊細な青が美しい「ペガサスに乗るミューズ」
今回の展示の看板作品の「神秘的な対話」

空想的な絵に、現実離れした神話のような色彩。黒の時代の目玉の絵では、病んでいるようにも見えるだろうけれど、彼の絵はもっと遊び心があるようなものにも見える。

大きな絵で、眺めていると中に入って神話を体感しているような心地になる。宗教画ではなく、もっとシェイクスピアのような、創作的な物語の中にいるような。


自分は色が好きだ。
けれど色を使うのが下手だから、色も光も自分には扱う事ができない。
光あふれる絵や風景を観た時、とても眩しく思う。
本当に残したい一瞬は、いつも胸の詰まるような光と共にあるのに。

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ポストカードは神秘的な対話しか販売されていなかった。薔薇水晶みたいな雲がきれい。
写真の青の鳥の絵はピカソのなんだけれど、気に入ったからそれも買ってきた。

たしか3時間ほど掛けてゆっくり観たけれど、とても良い展示だった。
これ以来、鴇色の空を見ると、ルドンの空を思い出す。


これまでサポートくださった方、本当にありがとうございました!