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夜半の目覚め

 夜中に地震で目が覚めた。大した揺れではなかったけれど、そこそこ長く揺れていたので念のため震源を確認する。震度3なら被害は無さそうだ。エレベーターは震度4で止まるけど、経験的に家の中のものが動き始めるのは5弱からだ。遠花火(とおはなび)という季語があるけど、遠くを思う気持ちはあっても遠地震では季節感はないから季語にはなれないなというようなことを寝ぼけた頭で考える。
 目覚める直前まで夢を見ていた。最近、よく映画のような夢を見る。学生時代の友人とパリを歩いていた。パリと言っても新宿くらいの感覚だ。古い映画館に向かう途中、道端で出来たての演劇のチケットを薦められたのだが、買うのが当然みたいな雰囲気にちょっと違和感を覚えて断ったところで目が覚めた。平安の頃は、夢に誰かが出てきたら、その人が自分を想っていると解釈したらしい。随分都合のいい受け取り方のような気もするけれど、案外幸せな理解の仕方かもしれない。今なら、理由は自分の方にあると考える。もう随分会っていない友人が夢に出てきた理由は分からないけれど、きっと無意識の中では然るべき繋がりがあったのだろう。尤も、自分は無意識でも、夢に見たことでその人のことが気になりだすということはある。そう考えると、無意識も無下にはできないなあとか。
 そんなことをぼんやり考えていたら、ふと、前日に頂いたコメントへの返信が失礼だったのではないかという思いが浮かんできた。相手の意図を踏まえたつもりだったけれど、それより自分の言いたいことが強すぎて相手の考えを否定したように取られなかったろうか?大体失敗するのはこういうパターンだ。言葉だけのやり取りは相手の表情が見えない分難しい。明日の朝に改めて返信しようかとも思ったが、忘れそうなのでその場で書き込んだ。それはそれで、夜中に酔って書いたラブレターみたいな危うさがありそうではあったけれど。
 いつの間にかまた眠りに落ちて、明るくなってから目を覚ますと、外では今年初めてのホトトギスが鳴いていて、やがてそこにカッコーとウグイスも加わって豪華な初夏の三重奏になった。今日も少し風があるけれど、爽やかないい天気になりそうだ。

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