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#69 月は下弦に

 11月になった。日中はまだインディアンが夏と間違えそうな程だけれど、朝晩はさすがに気温も下がって、朝には秋霧が深く、夕方外に出るとこの季節特有の匂いに癒される。ハロウィンが終わった途端にクリスマスが始まるようになったのはいつからだろう。'80年代にはまだハロウィンはマイナーなイベントで、仕事で新しい商戦のテーマにしようと紹介していたくらいだった。クリスマスのスタートも11月下旬、ユーミンのニューアルバムが出た辺りからという印象だったけど、イルミネーションの点灯式は早いもん勝ちという風潮が広まって、結果ハロウィンとクリスマスが繋がったということだろうか。クリスマスの翌日から一気にお正月に模様替えする国だから、別に驚きはしないけど。
 8月、9月、10月とずっとバタバタしていたのがようやく一段落して、今は次のバタバタ前のつかの間の平穏というところ。世界は酷いことになっていて、ニュースを見るのも憚られるほどだ。ダメなものはダメでNOを表明するのは当然として、そこに至る過程も理解しないと解決の糸口は見えないのだが、力を持っているものにモノが言えないでいるという構図がいたるところに転がっている。お互いの正義を主張しあっても対立が深まるだけで、必要なのは相手がそうせざるを得ない理由を踏まえて、それを改善していく具体的な方法を探っていくことだとは思うのだが。
 とは言っても物事はそれほど簡単ではなくて、個人レベルでも、自分のしたことに思うような反応が得られなくてモヤモヤしていたりする。何という低次元、情けなくなる。若松英輔さんがネットの記事で利他について書いていて、「させて頂いてありがとう」という段階でもまだ器で水を受け止めているという意識があって、その器が通路になって風が通り抜けても分からないという状態が(究極の)利他ということなのではないかと。なるほど!と膝を打つと同時に、まだスタートラインにも立てていない自分を見つけてがっかりする。
 まあ、いい歳をして自分を卑下してばかりいても仕方がないので、開き直って出来ることをやっていくことにしよう。有明の月は下弦に向かっている。次の二十四節気は立冬だ。山へ行く前にタイヤを交換しないと…。
 

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