邦ロック邦ロック邦ロック
音楽を聴くのが好きだ。日本語の歌詞がついていて、歌詞の意味がわかる方がいい。よく聴くジャンルは邦ロックだけど、知識の量、愛の深い浅い、ライブにどれだけ行ったかでマウントの取り合いになるのを想像すると気が滅入るし、人におすすめされると一気に興味が失せてしまうから、音楽中心のSNSアカウントは持っていない。
何かをおすすめされたら時間作って見たり聴いたりして感想言わなきゃって義務感が生まれる。義務感が生まれた時点でその物を100%好きになることってないと思う。同じものを好きな人を探しに行くこともない上に、周りの人におすすめもしないから、同じものを好きな人となかなか出会わない。でもやっぱりたまには好きな音楽について喋りたい。音より歌詞に注意して音楽を聴くので、歌詞をメインに紹介したいと思う。
私を構成する9枚
①JUMP UP/スーパーカー
高校生の時通っていた塾で、新しく私の担当になった英語の先生が偶然私と同じ高校の出身だった。ある日音楽の話になって、主にUKロックを聴くと言う。そっちは何を聴くのかと聞かれてスピッツと答えたら、先生が2組だけ邦ロックで聴くうちの1つがスピッツだと言った。それだけでも嬉しかったのに、もうひとつは何ですかと尋ねると「いやー知ってるかな…スーパーカーって言うんだけど」「えっ、あの“YUMEGIWA LAST BOY“のですか?」「そうそう!!!」
その先生から貸してもらったアルバムが『JUMP UP』だった。“WALK SLOWLY“や”Sunday People”は『スリーアウトチェンジ』の爽やかで繊細な世界を引き継ぎ、”Skyphone Speaker”、”Daydreamer”は『FUTURAMA』の大人になることを受け入れたような孤高のイメージに繋がっていて、スーパーカーの2つの良さがバランスよく収まっている。
1番好きな歌詞は“Tonight“のこの部分。スーパーカー究極のラブソングだと思う。これをナカコーじゃなくてミキちゃんが女の子全開の声で歌うのがずるい。都会から帰ってきた彼女は、地元で1番頭がよくて上品でかっこよかった彼が大したことない人だったのかもって薄々気づいていて、彼もそれを自覚していて、かつての友達も思っていて、でもそれを認めたら昔の輝きも嘘になっちゃうから2人で目を逸らし続ける。そんな物語がすっと浮かんでくる。
このアルバムが発売された時のロッキングオンジャパンの記事のタイトルは『ハロー、僕らのスパカ!セカンド・ステップへ静かなジャンプ・アップ』。記事を書いた人もスーパーカー大好きなんだろうな。
②スリーアウトチェンジ/スーパーカー
肩の力を抜いたメロディと精一杯強がる歌詞が眩しく煌めいている。
歌詞には、変にプライドが高くて素直になれない、でも自信がない傷つきやすい、時間を持て余しているようで時間がない、どこにでもありそうなのに強烈に記憶に残る数々の一瞬、という王道の若者要素があちこちに散りばめられている。キラキラした青春を送れてない人も見捨てないで拾ってくれる。
解散前か何かのインタビューで、インタビュアーが作詞のいしわたり淳二に「スーパーカーを1番愛していたのはジュンジでは」みたいな質問をして否定されていたけど、いしわたりは本当にナカコーの作る曲に惚れ込んでいて最大限良さを引き出そうとしてたんだろうなって思う。
④空の飛び方/スピッツ
”空も飛べるはず”が収録されているから、アルバム名も『空も飛べるはず』にすればわかりやすいけど『空の飛び方』にしてあるところが素敵だなと思う。”空も飛べるはず”だけを聴いても空を飛ぶ方法はわからない。
草野さんはロッキングオンジャパンのインタビューで「このアルバムっていうのは、これを聴いて、選ばれた奴だけが”飛ぶ”んじゃなくて、『誰でも飛べる!』ってことですよね」とか、世知辛い世の中を掻き分けるように飛ぶというものではなくて、もっと荘厳な、サーフィンで飛ぶみたいな解放のイメージだと述べている。(世知辛い世の中を掻き分けるように飛ぶのはどっちかというとミスチルっぽい)
小学生の頃は暗いという印象があって嫌いだったけど、今1番繰り返し聴く曲は”青い車”。肌寒い夏の朝4時半、太陽が昇る前の青い光で満ちた、まだ眠っている穏やかな海。歌詞にある輪廻という言葉のように波が砂をさらって押し戻してを繰り返す。海沿いの広い一本道をぽつんと走る青い車。イントロだけで映像が目の前に広がる。
心中の曲、恋人との別れの曲、逆に希望に満ちた曲、色んな解釈があるけれど、私は「同性の、友達より親しいけど恋人とは違う人との曲」だと思って聴いている。
同じくらい好きなのが“サンシャイン“。「すりガラスの窓をあけた時に よみがえる埃の粒たちを動かずに見ていたい」という一節、誰もが舞い上がった細かい埃が光を受けてキラキラ輝いているのを見たことがあるはずだけど、それを歌詞にできるのがすさまじい。
④スピッツ/スピッツ
このアルバムと『CRISPY!』と『惑星のかけら』で散々迷った。『CRISPY!』の“夏が終わる““多摩川““黒い翼“、『惑星のかけら』の“惑星のかけら““アパート““日なたの窓に憧れて““ローランダー、空へ“、何回も聴いた曲がたくさんある。
全体的に明るい感じがするが、ただ明るいんじゃなくて空元気というか、うっすら内側に籠るような暗さが滲んでいる。
中でも異質なのが“月に帰る“。奏法の違いとか使われている楽器とか全然わからないから色で表現すると、オレンジとか黄緑とか黄色の中にいきなり青紫が混じっている感じ。でも濃い青紫じゃなくて、周りのオレンジや黄緑や黄色もそうであるようにパステルで塗ったみたいにぼやけているから馴染んでいる。
「マントの怪人叫ぶ夜 耳塞いでたら 春の風によじれた 君と僕と」とか「五千光年の夢が見たいなうしろ向きのままで 涙も汗も吹き飛ぶ強い風に乗って」とか、高1で初めて聴いた時は歌詞が難しくてよくわからなかったし今もわからない。インターネットで考察とか解説とか読んだけれどあまりしっくりこない。歌詞を細かく拾って全てに意味を与えるのは違うのかも知れない。
⑤ユグドラシル/BUMP OF CHICKEN
スピッツやジュディマリとかとは違って母親の影響ではなく自分から好きになったバンドだし、初めて買ったCDだから1番思い入れがある。小5か6の時にCMで流れていたバンプの曲が気になって、こっそりパソコンで調べたらおすすめアルバム1位だったので誕生日に貰ったお金で買った。シュリンクを開けた時、CDのケースってこんなにピカピカなのかと思って、傷をつけないようにタオルに巻いて枕元に置いて寝ていて、歌詞カードを読む前は必ず手を洗っていた。8年近く経った今でも開封したてくらい傷がない。
驚いたのはCMの声と随分違ったことだ。私は「叫んでる!」って感じがするからガサガサ声時代のパンプの方が好き。
中学では半ば強制的にバレー部に入ることになった。小学生の頃から怖かった先輩たちからの当たりが更にキツくなって、2人しかいない同学年の子たちにも仲間はずれにされたので、部の中で孤立してかなり苦しかった。なるべく目をつけられないように空気になろうとして、傷つけようと悪意のあることを直接言われても曖昧に笑って、こんな毎日がこれから3年間も続くのかと夜布団に入って気が遠くなった時に“オンリーロンリーグローリー““ギルド““fire sign““ランプ“を聴いた。特に“ギルド“は歌詞に希望がない曲だけど1番よく聴いた。
あの頃の自分に自信がなくて情けなくて価値がないんじゃないかと思っていた私を救ってくれたから、本当の意味で私を構成するアルバムだと思う。
⑥焦燥/GLIM SPANKY
最近、楽曲の中に元スーパーカーのいしわたりさんが関わっているのに気づいて縁だなと思った。
“愚か者たち“が映画の主題歌になって、CMで彼らを知った。中1の私には1stアルバムの『SUNRISE JOURNEY』を買うお金はなかったので1500円くらいだったこっちを買った。
M1の“焦燥“。「どこにでもある」ならわかるけど「どこにもある」ってちょっと違和感あるなと思っていたら、2009年の閃光ライオットでは「真実はどこにもないってことを知ってる」と歌っている。真実ってそんな大層なものじゃなくて、少し考えてみれば色々なところに小さく潜んでいるってことなのか。わからない。
EPは“ひこうき雲“のカバーで締めくくられる。 ボーカルの松尾さんが、独特の広がり方をする声で“褒めろよ"とか“アイスタンドアローン“のような力強い歌詞を歌うと言葉の持つ力以上に迫力が出るが、松尾さんの声はざらざらした中に不思議な柔らかさと透明感があるから、この“ひこうき雲“とか“さよなら僕の町“、“ロルカ““Looking For The Magic“みたいな弾き語りの曲や優しい曲で最も真価を発揮すると思う。
⑦Sugar High/鬼束ちひろ
1stアルバム『インソムニア』に収録されている“月光“で「I am GOD'S CHILD」とはっきり言っていたのに、M1の“NOT YOUR GOD“には、私は貴方の神もヒーローでも救世主でもない、私を傷つけないで困惑させないでという歌詞がある。今までの歌詞に出てくる「貴方」は他者だったけど、ここの「貴方」は鬼束ちひろ自身なのかなと感じた。自分は特別な存在=神だと信じて縋る自分と、ただの人間だと疑い絶望する自分。
そしてアルバムの最後を飾る“BORDERLINE“。
1stの『インソムニア』、2nd『This Armor』では見られなかった『貴方』を完全に拒絶する歌詞。鬼束ちひろはこのアルバムから神ではなくなったのだと思う。過去は神だと信じて救われていたが今は神ではないと認めることで救われる。
⑧THE BOOM/THE BOOM
“風になりたい““島唄“で有名なTHE BOOMのベストアルバム。“気球に乗って““子供らに花束を“みたいなメッセージ性の強い曲から“なし““きっと愛してる“のような速くて明るい曲、変化に富み過ぎてまとまりがなく感じるが“島唄“できっちり締まる。
“中央線“。https://www.youtube.com/watch?v=SRTG6NC54yQ
曲の始まりから「今頃君はどこか居心地のいい 町を見つけて猫と暮らしてるんだね」まで後ろには穏やかなアコースティックギターの音だけが流れているのだが、「走り出せ中央線」からドラムが加わり、間奏でエレキギター、ハーモニカが加わる。大学生になって、作詞作曲の宮沢さんと同じ山梨に引っ越して中央線に乗るようになった。飛び乗った中央線が都会に向かって速度を上げていく様子を音でそのまま表現していて、電車の中で聞きながら何十年前の宮沢さんと同じ車窓を見ているのだと嬉しかった。
⑨ファンファーレと熱狂/andymori
歌詞からアルバムの名前をつけるのって意外と珍しい気がする。
今まで上げたアルバムは結構長く聴いてるけどこれは去年大学生になってすぐの頃に知ったので、聴くとまだ消化しきれてない悩みとか不安とかを思い出して胸がちくっとするので最近はあまり聴いていない。
スーパーカーの『スリーアウトチェンジ』と同じく青春のアルバムとか、中高生に聴いてほしいアルバムとか言われていて、確かに高校生の頃にこの歌詞たちに出会っていたらもっと違ったかもって思ったけど、
こうやってみると中学生高校生の頃に聴くより大学生や社会人になって聴いた方が沁みるような歌詞も多くて、高校生の頃じゃなくて大学生になってから出会ったのはちょうどいいタイミングだった。
思ったより長くなっちゃったのでここまで読んだ人がいるのかわからないけど、これで9枚のアルバムの紹介は終わりだ。
最後まで迷ったART-SCHOOL『PARADISE LOST』、N'夙川BOYS『プラネットマジック』、Nod Off…『All Alone』、チョモランマ・トマト『カジツ』、JUDY AND MARY『ORANGE SUNSHINE』についても機会があれば書きたい。
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