見出し画像

バセドウ病と私⑤ さよなら、甲状腺!

手術前日

入院2日目。ぐっすりとまではいかなかったけれと、夜も寝られたし、ご飯もほぼ完食。とにかくヒマ。ひま。暇。やること無さすぎて、読書にも集中できない。パソコンにダウンロードしてきた「新感染 ファイナル・エクスプレス」を見る。え! これってゾンビ映画なの!?   感染ってあるから、「コンテージョン」みたいなのだと思ってたのに…。でも、最後までちゃんと見た。韓国のゾンビは運動神経がいいね。
映画見て、テレビ見て、ラジオ聴いて、本読んで、ベッドの上で丸一日を過ごす。職場の仲間たちはそろそろ帰る時間、私は夕食の時間。
今晩9時以降は禁食、明日の朝7時以降は水も飲めない。コーヒー牛乳以外はおやつも食べず、消灯時間を迎える。

手術当日

朝6時起床。この1時間で水を500mlほど飲むように言われているので、テレビを見ながらちびちび飲む。脱水状態だと点滴がうまくいかないそうだ。
あと数時間で手術。生まれて初めての手術。意外に気持ちは落ち着いている。今日一日の流れについては説明を受けたし、特に心配なし。気になるのは術後の痛みくらい。同室の方々の朝食の匂いがする。おなか空いたな…。
点滴の針を入れる。生まれて初めての点滴。ちょっと痛かった。歯を磨く。次の指示を待つ。

ついに手術着に着替えるよう連絡が来る。紙のパンツに履きかえ、手術着を来て、看護師さんと一緒に歩いて手術室に向かう。

金属製の自動ドアが開く。生まれて初めての手術室! これが手術室! 医療ドラマが好き過ぎて、時々、医療関係者に間違えられる私。違う意味で興奮する。壁掛けのCDプレイヤーから音楽が流れている。先生が好きな音楽? それとも患者をリラックスさせるため?
念入りに本人確認、術式の確認をする。間違えて患部と違う脚を切断した、なんて話を思い出した。
いよいよ手術台に乗る。自分で乗る。台せまっ!
あれが無影灯! なんてキョロキョロしているうちに、あれよあれよと準備が整う。
麻酔科の先生、執刀の先生に「よろしくお願いします」と挨拶する。
「吐き気止め入れます」
「ちょっと冷たい感じがしますよ」
 麻酔科の先生の声を聞いて、身体がフワッとしたその2秒後、意識が無くなった。

暑い。布団が暑い。でも起き上がれない…。あ、もう病室のベッドだ…。マスクの上に酸素マスクしてる! なんだかぼーっとする。看護師さんが酸素マスク外したり、ナースコールを握らせてくれたりする。「暑い?」と聞かれたので、「はい」と言うが声が出ない…。布団からバスタオルにしてもらい、再び寝てしまう。

看護師さんに声を掛けられ、目が覚める。
手術着からパジャマに着替え、水を飲む練習をするのだ。
だるい…。さすがに元気が出ない…。
事前に習った通りに、横向きになり、手をついて、首に負担がかからないようにそろそろと身体を起こす。
上を向けない。確かに、とペットボトルから直に飲めないわ。ストローが必需品なわけだ。
むせることなく、水を飲めた。第一関門通過。
でも声がひどくガラガラで思うように話せない。
あのプロレスラーの人みたいだな。
よろよろと着替えているうちに、急に吐き気に襲われた。
トイレに行き、吐いてしまった。気持ちが悪いせいか、痛みは気にならない。看護師さんから非常用の膿盆を受け取り、様子を見ることに。膿盆って、今は使い捨てなんだね。
腕には点滴が繋がり、首からはドレーン(管)が出ている。ドレーンは痛くない。
引き出しからスマホを取り出し、電源を入れる。家族のLINEに報告を入れる。テレビをつけるが、なんだか見る気がしない。またウトウトする。
目が覚めて時計を見るともうすぐ真夜中12時。ヤバい、気持ちが悪い。トイレに駆け込み、また吐いてしまう。看護師さんには体調を伝えた。もう寝ることにする。

翌日以降。

朝6時起床。今日は朝からお粥が出る。無理。気持ち悪くて食べられそうもない。お粥は数口、おかずは頑張って食べた。食べられないと、点滴になっちゃう。

もう私には甲状腺がない。今日から甲状腺ホルモンを補う薬を飲む。一生飲み続ける薬だ。家にあるメルカゾールがもったいないなぁとケチなことを考える。
甲状腺にくっついている副甲状腺は血液中のカルシウムの濃度調節をつかさどる。もしかしたら、副甲状腺も働かなくなっているかも、ということで、カルシウムを補う粉薬も飲む。上を向けないので粉薬はヨーグルトに混ぜて飲む。小さい子どもみたいだ。

午前中は最後の点滴をする。
37度前後の微熱がある。つわりのように、なんとなく気持ちが悪い。テレビを見ていても、本を読んでいても、気がつくと寝ている。一日中、ウトウトしていた。痛みはほとんど感じない。人間てすごいなぁー、たいして痛くないんだもん。もっともっと痛いものだと覚悟していたんだけど。鎮痛剤は不要、私が痛みに鈍感なのか?

声が出ない。ガラガラ声しか出ない。鼻から内視鏡を入れて声帯を検査するが、異常なし。それでもこんな声になるのか! 

次の日。吐き気はおさまったが、食欲がない。もしかしたら、これが「普通」の食欲なのか。ずーっと、多すぎる甲状腺ホルモンのため、食欲が亢進していたのか。甲状腺ホルモンのせいで太ったのか!

傷の痛みはないが、テープの部分が赤くなりかゆい。軟膏をだしてもらう。

自分で手術の傷をケアする方法を習う。自分の傷を見るのは怖い。グロい。首がフランケンシュタインみたいだ。ビクビクしながら、テープを張り替える。出血もしてないし、消毒は不要なんて、これまた人間てすごいな! 割と雑なんだね。

手術後は重いものを持つこと以外は特に禁止事項なし。でも振り向きにくいので、車の運転、自転車に乗るのは安全確認がスムーズにできるようになってから。歯医者、美容院もしばらくはガマンしたほうかいい。先週、美容院に行っておいてよかった。

入院中、看護師さんにたくさんお世話になった。「ガマンしないで、ナースコール押してくださいね。仕事ですから遠慮なく!」って言っていた。かっこいい。ミスは許されない大変な仕事だ。夜勤もある。めんどくさい患者さん相手にキレないだけでもスゴい…。
自分が小さい頃、看護師さんになりたかったことをしみじみ思い出した。

退院

予定時間より短かった手術時間。その後は予定通りに進み、予定通りに退院となった。入院費も予定通り。ありがとう、高額医療制度。
同室だった方とLINEを交換して、友達になる。戦友みたいなものだから。
スカーフを持って来てよかった。自分はいいが、周りの、グロいのが苦手な人に傷を見せることはしたくない。いつの間にか、外は真夏になっている。

看護師さん、薬剤師さん、先生方、お世話になりました!
毎日、お掃除をしてくれたスタッフの方々、看護助手さん、ごはんを作ってくれた調理師さん、ありがとうございました!

その後

退院して2日後から出社した。人間てすごいよ。

#健康   #病気の話 #バセドウ病 #病院

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?