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小説詩集「恋愛アプリ」

丸い地球の上をまあるく歩いているよ、君にむかって

記憶のなかに、手に入れられなかった、とか立ち去ってしまったとか、そんなものが住み着いていて、僕は再生デバイスが映し出すのを休日の午後に観てる。
その思い出の一つ一つを手にとって、ドミノ作りに熱中してる。
「ほんとは後ろ歩きしてるんだな、」
選択のその先に、いやなデジャブがまちぶせてるしね。


編みはじめてるよ、マフラー

冬の恋はありがたくって、得意のマフラーを編み進めてるの。
だけど今朝、公園の池の周りをぐるぐる走ってたら、足もとに鳥が眠るみたいに横たわってて、その姿がいつまでも心に残ったの。
「魂と体はべつ物なんだ、」
とかも思ったけれど、私の手がズンズン手ぎわよさげに編んでゆくから驚いて目を見張った。


強風だけど、彼女に会いにゆきます

時間潰しの映画を見ながら部屋中のグルグルしたドミノが完成して、僕はポンと弾いた。それが過去へなだれ込んでゆくのをぼんやり眺めてた。
なのに、倒れたはずのドミノがふとした弾みで戻ってきて、誰かが時を進めたのか、って息を飲んだ。
「神様が僕を助けようとしてるんだ」
って分かった。もちろんこれは彼女ふうに言えば、と言うことだけど。
のしのしと進んでくる何かが僕のドアをノックする。だから、僕はパソコンを閉じて彼女に会いにゆく。古いデバイスのそのスイッチ切って、地球上をまあるく歩くみたいに彼女に会いにゆこう。強風にめげずに彼女のところまで行き着こう。


やっとできました渾身のマフラー、って言ったら重すぎるかなあ

半分まで編み上げて、ずけずけと侵食するみたいなこんなもの、とか自信が失せ始めたから糸を解いた。んで気を取り直して、やっぱりまた編み始めたのは一度や二度じゃない。時間が編み込まれるみたいに、それが繰り返された。
「そうだ、」
風のある日に渡そう。彼の首に巻きつけて、途端マフラーが強風にとばされるんだ。そしたら、彼を縛りはしないんだ。
「よし、」
とか言って、袋に詰めて麻紐で結んでバッグに押し込んだ。


友人の彼に編んだマフラーが風に飛ばされたらしい

飛ばされたマフラーは彼がキャッチしたらしい

マフラーが飛ばされたのは事実だけど、地球を一周して彼らの元へ戻ってきたらしい

戻ってなんかなくて、友人と彼はマフラーを探しに、地球をまあるく歩く旅にでたらしい

最近彼らの声きかなくね

聞かなくなくね

おわり


❄️ふゆだ〜みたいな気温低下に動揺し、ありもしない設定で、ラチもない話を書いてしまった、みたいな五右衛門の斬鉄剣てきセリフがもれます。
12月が近づくと地球の動きを意識せざるを得ないみたいなことでしょうか。
冬と編み物はセット、冬とおでんもセット、冬とココアもセット、冬と、、神経衰弱みたいにつきません。また書きます。ろば


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