短篇「君を見つけてしまった」6/8
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「この町にはね、元は電柱だった栗の木があるの」
「元栗の木だった電柱じゃなくて?」
「ええ、元電柱。電柱が木製だったころの話よ」
昨日彼女が教えてくれた町の伝説の一つだ。二人で探しに行ってみると、実際大きな栗の木があって古い屋敷を取り囲んだ塀に寄り添うように立っていた。栗の木には外灯がくくり付けられていて、バス停のベンチを照らし出していた。だからそれは確かに電柱の化身のようにも見えた。
「もう電線はないけれど、ここにいると電線の唸る声が聞こえてくるの」
彼女