(詩)口笛ふいたら

口笛ふいたら
幼い少女がまねして
口笛ふいた

それはもしかすると
生まれてはじめて
少女がふいた口笛
だったのかもしれない

そうやって人は
誰かのまねをしながら
いろんなものを覚えていった

泣いたり笑ったり
うそをついたり
ぐちったり
覚えていった、そうやって

人は知らないあいだに
誰かのまねをするうちに
大人になった


わたしの前で
生まれてはじめて
口笛ふいたの誰だったろう
おかげでさびしい口笛
おぼえてしまった

わたしの前で
生まれてはじめて
泣いた人は誰だろう
おかげでわたしは
泣くのがへたで

わたしの前で
生まれてはじめて
笑った人は
あんまり幸福では
なかった、ことを

ついつい今でも
想い出してしまう
そんなわたしの笑い方が
なんだか、かなしくて

風に吹かれ口笛ふいたら

幼い少女がまねして
口笛ふいた

口笛ふいたら少女には
けれど
笑ってほしかった

さびしい口笛など覚えずに
ぐちや泣き言など
知らないままで

幸福な人になって
ほしかった

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