オランウータンのマスコット人形

前を歩く少女がカバンに下げていた
オランウータンの
マスコット人形が揺れながら

ぼくの顔を見ている
不細工な顔して
不細工なぼくを見ている

もう繁華街は
夕暮れの人波でにぎわっていた
駅へと続く地下道を
ぼんやりと歩いていた
ぼくの目の前に

前を歩く少女がカバンに下げていた
オランウータンの
マスコット人形が揺れながら

ぼくの顔を見ていたので
ぼくは思わず立ち止まった
オランウータンの
マスコット人形を見ただけで

じっとぼくを見ていた
オランウータンのマスコット人形は
そしてあの日のきみのように
たそがれの人波にもまれ消えていった

そのオランウータンの
マスコット人形ひとつで
きみを想い出した
人波の中でぼくは
きみを想い出してしまった

不細工なそのオランウータンの
マスコット人形の顔が

たしかきみが
カバンに下げていたのとおなじ
そのオランウータンの
マスコット人形の顔が

ぼくの顔に似ていたことに
今頃やっと、気付いたよ

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