エスカレータ

人波から少し離れて
エスカレータの
一番後ろに乗るのが好きさ
人込みの中で
わざとゆっくり歩くのも

何人の人と
ぶつかるか数えながら
何人の人と
ぶつかったら
きみに会えるだろう

東京で暮らす人の数だけ
ぶつかれば会えるかな
でもおんなじ人と
ぶつかったりするから
やっぱりきみには
会えそうにない
……都会なんて、そんなものさ

男は
好きな女の子がいないと
詩が書けない
詩人はたえず
誰かを好きでいなきゃ
詩が書けないから

きみに飽きた後
ぼくは
誰を好きになろう
そもそもきみに
飽きたりするかな
きみの後に
誰かを好きになれるかな

だからぼくは
詩人になるのを諦めた
もう詩なんか
書けなくていいから
ずっと
きみを好きでいるから
多分、好きでいるから

エスカレータの
一番後ろで
何度も振り向いている
やつがいたら
何度も何度も振り返って
きみを
捜しているやつがいたら

ぼくだと思ってくれ
エスカレータの一番後ろで

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