(詩)夕映え飛行

空、雲
鳥の群れ
夕映えの海

飛ぶ、という言葉は
鳥のためにあると
思っていた

翼を持つ者たち
だけのために
ある言葉だと

空、雲
鳥の群れ
夕映えの

穏やかな波
誰もいない
波打ち際に突っ立って
押し寄せる波に
汚れた足を洗いながら

そっと手を広げて見る
あたりを見回し
誰も見ていないのを
確かめながら

思い切りうでを上げ
空いっぱいに広げてみる

空をゆく鳥たちが
ほんの一瞬おどろいて
わたしを見る

もしかしてあいつ、
飛ぼうとしているのか
あいつ、飛べるのか
あんなに重い体と
そして罪を背負って


今度、波が
押し寄せてきたら
今度、風が吹いてきたら

飛んでみようかなぁ
あの
夕映えの海の彼方へと

空、雲
鳥の群れ
夕映えの海は

どうしてどこも
おんなじ夕映えの
海なんだろう

夕映えの海は
どうしていつも
どこかへ
帰りたくなるんだろう
もう、どこへも
帰れないのに
もう、どこにも
帰る場所など
ないはずなのに

飛ぶ、という言葉は
鳥のためにあると
思っていた

心にも
翼があることを
忘れていた
わたしにも
翼があることを

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