チュウインガムの少年

ひっしで女を口説くために
女のいいなりになる
大人の男の姿を見ては

あんなの下らねぇやと
吐き捨てていたはずの少年たちも
いつか大人の男になり
背広やらネクタイやらシャレて

サラリーなど稼ぎ出し
クレジットカードを持ったり
酔っ払って電信柱にからんだり
厚生年金を払ったりする頃になると

やっぱり少年たちも
あんな下らない大人の男に
なってゆくだろう
それから身長や学歴や
年収で相手を選ぶ
そんな下らない女たちを
ひっしで口説き落としては
はしゃいだり、仲間に
自慢したりすることだろう

きみたちが
好むと好まざるとに関わらず
きみたちが男である限り
それを決して拒むことはできず

そしてそうやって
段々と現実に打ちのめされ
夢を失い、ひとみはくもり
いつかみんな、手に届くものばかりを
求めてゆくようになるだろう

そして誰もが
少年の夏の日にもっていた
少年だけがもつ、あの

やさしさを
なくしてゆくだろう


いつかある日
そんなきみの姿を
街で見かけた少年たちが
今度はきみに向かって
つぶやくんだ

あの頃のきみが、そうしたようにね
くわえていたチュウインガムを
吐き捨てるように

おっさん、下らねえ
やつになっちまったな、ってさ

だから大人になんかなりたくないと
だから年なんかとりたくないと
つぶやきながら

そう、あの頃のきみが
そうだったようにね

だから死にたい時は
海にいけ
ひとりぼっちで
どうしようもなくさびしい時は
海を、見にいけ

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