(詩)土曜日の風

大人になっても
土曜日の午後に吹く風は
小学校の終わった土曜日の
下校時刻にもどしてくれる

帰り道の風
お昼ご飯を食べる時の風
友達が迎えにきた時の風
駆け足でみんなの所にいく時の風
みんなで遊んでいる時の風

それから日が暮れて
みんなとお別れする時の風
とぼとぼ家に帰る時の風
TVを見ながら
夕ご飯の支度を待っている時の風


大人になってはじめて気づいた
それぞれの風の中に
世界があることを

紙芝居、ステンドグラス
走馬灯、影絵
映写機、ネガフィルム

人はいくつも風にあこがれ
風に近いものを作ってきたね


歴史の風、地理の風
動物の風、植物の風
星の風、海の風
いろいろな風が吹いていた

ぼくという
流れ去る一生に寄り添うように
あるいはかばうかのように
吹いていた

いつかぼくの一生が終わる時
やさしくぼくを
仲間に入れてくれそうだ
よかったな
そして風は
いつまでも吹いている


人々のといき、夢
願い、涙、微笑み
それら風の成分たち

きみの土曜日の午後に
いつか風になったぼくが
吹きすぎてゆく時のよろこび

きみのほっぺたを
軽くたたいてゆく時の幸福

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