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(詩集)きみの夢に届くまで

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詩の数が多いので、厳選しました。っても多い?
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#雨

(詩)きみの夢に届くまで

この夜の何処かで 今もきみが眠っているなら この夜の何処かに 今きみはひとりぼっち 寒そうに身を隠しているから 今宵も降り頻る銀河の雨の中を 宛てもなくさがしている 今もこの夜の都会の片隅 ネオンの雨にずぶ濡れに打たれながら 膝抱えさがしているのは きみの夢 幾数千万の人波に紛れながら 路上に落ちた夢の欠片掻き集め きみの笑い顔を作って 都会に零れ落ちた涙の欠片の中に きみの涙を見つけ出せば 今も夢の中で俺をさがし求める きみの姿が見えるから この夜の何処かに 今もきみが

(詩)冬のカルーセル

止まったままのカルーセル 雨の日だけ カルーセルが回っているのを 見た子どもは カルーセルは雨の日だけ 回るものだと思う 風が吹く時だけ カルーセルが回っているのを 見た子どもは カルーセルは 風が回しているのだと思う 止まったままのカルーセル ひとりの子は 雨が降るのを待ち 別の子は風が吹くのを 待っている 止まったままのカルーセル 雪が降る時だけ カルーセルが回っているのを 見た子どもは もう一度 雪の中で回る カルーセルが見たくて 冬の遊園地のすみで じっ

(詩)リンダあるいは

リンダあるいは どぶねずみみたいに 今夜はきみに 辿り着けない雨に打たれながら とぼとぼひとり街を歩いた 「どぶねずみみたいに・・」 口ずさみながら あれはリンダだったか マリアだったか、あの歌の きみのださい純和風のお名前とは 似ても似つかない いかした女の子の名前 アベ、マリア アベ、リンダ アベ、そして さいわいあれ、マリア さいわいあれ、リンダ さいわいあれ、そして どれだけ雨に打たれても それが降りしきる その雨のしずくが きみのいる街へと連れてゆく

(詩)雨に消えた微笑み

肩を濡らす雨に気付いて 傘を差すきみのため息が白く 星のない夜の空に消えてゆく ぼくがなりたかったもの きみの肩を包むレインコート きみの肩に寄り添う傘 きみの肩に落ちた雨のしずく ふときみがついたため息 傘も差さず大きな声で呼んだら きみは振り向いて少しだけ笑った なりたかったもの ただしずかに降りしきる雨 きみがいなくなった後 きみの微笑み思い出すように 何度も何度も思い出すように ただしずかに降りつづく雨に なりたかった

(詩)傘にあたる雨粒の音

雨が降り出す時は すぐにわかる 雨の音で 窓ガラスのくもりで 行き交う人が開く傘の色で 駅のホームの灯りの にじみ方でわかる そして雨がやむ時はいつも 誰にも知られずやんでいる 人恋しくて泣き出した夜の わたしの涙とおんなじね 誰かの顔を 思い出したのがうれしくて 泣いてたことも忘れてる 傘も差さずに雨の街を歩いている人と 雨のやんだ街を 傘を差したまま歩いている人と どっちがほんとのさびしがりや、だろ どっちが本当の弱虫だろ 雨と傘とはそして どっちが泣き虫な

(詩)天気予報

今日笑っている人を見た 幸福そうに恋人と手をつなぎ はしゃぐように笑っている人を見た 今日泣いている人を見た かさも差さず雨に打たれ 泣いている人を見た けれど泣いている人は美しく わたしの目に 笑っている人はかなしそうに見えた 涙のあとに 微笑みが待っていることと 微笑みのむこうに 涙が隠れていることの どちらが幸福なのかはわからない 涙の中の微笑みと 微笑みの中の涙は どっちがかなしい、か 比較するすべもない 今日笑っている人を見た 今日泣いている人を見た

(詩)お風呂

おやじは仕事がえり 雨の街でばったり 見てしまった 娘が男に ふられるところを そして土砂降りの中へと かさもささずに 飛び出した彼女の背中を おやじは急いで 家に帰りつき お風呂をわかし それから彼女が びしょぬれになって ドアの前に立ったのを 確かめると 偶然そうに そっとドアを開け ひとことつぶやいた 「おふろ、わいとうよ」

雨花

花が雨にぬれている ひっそりと何もいわずに ぬれている とうめいなつめたい まっすぐに 空からおちてきた 雨にうたれながら 何もいわずじっと黙って 傘も差さずに 傘を差すことも知らないで くしゃみもせずに しっとりと恋するように いとしい人を想うように 今いちりんの花が 雨にぬれています おしえてくれよ ここが天国じゃないわけを ここが地獄でもないあかしを おしえて下さい おかした罪をつぐなうすべを 今いちりんの花が 雨に打たれながら 雨にぬれたわたしを じ

ずぶ濡れの野良猫

抱きしめてあげる 大丈夫 俺も濡れているから 土砂降りの中で あっためて、あげる 大丈夫だってば 俺だって泥だらけ 傘を持たない者同士なら 仲良く、やれるさ

雨の赤信号

赤い信号が 赤い車の テールライトを停めている 助手席の少女はぼんやりと 降りしきる雨を見ている ぼんやりと 鼻歌でも口ずさんでいるのか 赤い信号の灯りが ブルーライトに変わる時 動き出す テールライトの波また波 それきり 少女は口を閉じたまま せっかく数えていたのに 雨の数、数えていたのに いくつだか忘れてしまった あんまり突然 赤から青に信号が 変わってしまったから かぞえていた あなたの涙の数 かぞえて、 いたんだけれどなぁ こんな夜は 人恋しくありませんか

(詩)雨粒かくれんぼ

さっきまで雨の一粒だった水が ぽっちゃーんと川に落ちて プクプク、ぷくぷく 川の中にかくれんぼ 川は海へと流れ 海の水はキラキラと 太陽に照らされ天に昇る 「こんにちは」 隠れていた一粒の水は わたしの目から落ちてきた かくれんぼ、おしまい

(詩)雨小僧

いかにも 100均で買いました的 雨合羽で 朝から赤い棒を 振っている中年男の 額に滴り落ちる 透明な雨の雫 雨合羽のビニールに 当たって砕ける雨粒の音 こら、雨小僧 いつまで メソメソしてやがる さっさと泣きやめ 灰色の空を見上げながら 恨めしげに男は呟く おいこら、雨降り小僧よ どこに隠れていやがる とっととお天道様と 交替のお時間、です 頼むから、ねえ、お願い 良い子だから、 雨降り小僧の旦那 なあんてね 良い大人も 雨小僧にはお手上げ レインコートなんて