見出し画像

一旦停止、左右確認_博論日記(2023/12/16)

2024年3月31日の学位論文提出(目標)まで、あと104日(この目標については二転三転中)。

灯油の巡回販売車が町を頻々と走る季節になった。販売車の流す音楽は地域で様々なのだろうが、私の暮らす町では「雪やこんこ」(「ゆき」)と「垣根の垣根の」(「たきび」)の二択である。販売車がかけている音源には一番も二番も入っているのかもしれないが、だいたい耳に入るのは一番だ。「ゆき」も「たきび」も二番が好きなので、一番が流れると先取りして二番を脳内再生してしまう。

トップ画の風景は私にとって「たきび」の象徴のような小道だ。通るたびに
♪ さざんか さざんか 咲いたみちー / たきびだ たきびだ 落ち葉たきー
と、少し浮き立った気分になる。
そういえば、小学生の頃は小学校の用務員さんが校庭で落ち葉たきしていたり、通学路の田畑でも落ち葉たきをしていた記憶がある(匂いが微かに記憶に残っている)が、最近めっきり見なくなった。市民農園で二畝借りている母も「農園で火を使うのは禁止されている」と言っていたので、火の用心の意味でルールが厳しくなったのかもしれない。

今週は思わぬことで調子を崩してしまった。火曜の朝、1時に起きてホットミルクを作り、黙々と作業をしていたのだが、4時頃になって突然原因不明の腹痛に襲われた。ホットミルクのせいかと思いつつ、いつもはそんなことにならないのでよくわからない。バイトのために家を出る5時半までにおさまれば、とトイレとこたつとを何度も往復していたのだが一向におさまらず、遅刻ラインも超えてしまって、やむなくバイトを休む連絡をした。
その頃になってようやく落ち着いてきたのだが、げっそりと疲れてしまってそのまま寝ついてしまった。
情けないかな、これで気持ちが切れた。水曜日・木曜日・金曜日と布団の中でぼんやりと過ごした。1ヶ月ほどは日常を重ねることができていたのだけどなあ……。

今日も遅刻すれすれまで布団の中にいたのだが、なんとか這い出してバイトに出ることができた。早朝バイトがあることはちょっと大変だけど、かなり助かっている。ほとんど単独で品物を並べているだけなので、家を這い出して体さえ持っていくことできれば、なんとかなる。そして、ほどよい達成感を得られる。
おかげで、家族に頼まれていたのになかなか買いに行けていなかった進々堂のシュトーレンを買い、父親へのクリスマスプレゼントにと考えていたコーヒー豆を手に入れ、カフェで日記を書くなどすることができた。

まったくといって研究の進捗がない。ゼミ発表も迫っている。来週は時間の決められた予定も詰まっている。わわわわわ。

とにかく今は呼吸を整えなければ。

祖父の誕生日が近いので、和ろうそく屋さんに行こうと決めて歩き出した。
いつもnoteを書くのは日曜日だけど、明日は集中して作業をするのだ! という決意と願いの間のような気持ちを込めて、今日note(お散歩記録)を書くことにする。

目指す和ろうそく屋さんは松原橋近くの「キャンドル・ろうそく 小島商店」というお店。店内に昔ながらのろうそく作りの道具が置かれているという口コミを見て、訪ねてみようと思った。出発地点は四条烏丸。南北に走る烏丸通を東西に走る松原通まで南下し、鴨川にかかる松原橋を目指して東に歩いた。

最初は気力が乏しくて、カメラを取り出すこともせず、ゆっくりと歩いた。そして辿り着いた小島商店は、残念ながらお休みだった。

キャンドル・ろうそく 小島商店

気落ちしつつも、松原橋まで出てみる。

鴨川にかかる松原橋(北西端)

ここから河原町駅に出て帰宅しようかと思ったのだが、20分弱歩いてきた中で興を惹かれるものがいくつもあったなあと思って、もう一度来た道を出発地点まで戻ることにした。
今度は写真をいくつか撮ったので、それを紹介したい。

■明王院不動寺 @麩屋町松原

明王院不動寺

気力乏しく由来を斜め読みしただけなのだが、
・弘法大師作の「石仏不動明王」が安置されたのが始まり
・平安京を造る時に、桓武天皇が都を護るために都の東西南北の4ヶ所に経巻を収めた。明王院はその4ヶ所のひとつ
・鴨川の氾濫で一度流された
・豊臣秀吉の聚楽第の造営時に再び見出された
とのこと。
このとびとびの記述、平安京と言えば8世紀の終わり頃だし、豊臣秀吉の聚楽第の完成が16世紀頃、ほええと眺めている私は21世紀にいる。
「本当なのかどうか」よりも「人々が(紆余曲折ありながら)伝え信じてきたことが今目の前にある」ということに圧倒される。

■加藤小兵衛商店(漆・漆工材料の専門店) @富小路松原
お店の入り口の横に、うるし塗り教室のお知らせが貼ってあった。ショーウィンドウの隅に、謎めいたキットと試験管が置かれていた。

加藤小兵衛商店のショーウィンドウ(試験管※左より:生漆・透[すき]漆・黒漆)

テレピン油? なんだか画材関係の文脈で聞いたことがあるような気がするけど、いったいなんだったっけ。いや、そもそも漆とはなんであったか。漆器はすぐに想像できるのだが。
うーん、漆、ウルシ、植物、確か植物のウルシって触るとかぶれるって話を聞いたことがあるような…。ウルシという植物の抽出物で染色することが漆工芸って認識であってる? 

その場ではわからなかったので、帰宅してから調べた。
まずテレピン油とは、皮革用語辞典によると「松科の植物の樹木や松脂(まつやに)を水蒸気蒸留することで得られる精油」のことだそうだ。
そして漆芸とは、以下のように説明されていた。

「ウルシノキ」という木の幹にキズをつけ、滲み出した樹液を採取し、目的別に調整します。これを接着剤や、塗料として使用しますが、漆が固まる力を利用して形そのものを造ることもできます。
また金属粉や貝など、その他の素材を漆と組み合わせ、装飾する技法も古来より発展してきました。特に日本の漆芸は高度な技法が現代に伝えられています。

(公社)日本工芸会東日本支部HPより

日本工芸会東日本支部HPに踊る、乾漆、髹漆(きゅうしつ) 、加飾、 蒔絵、 螺鈿、平文(ひょうもん)、沈金、蒟醬(きんま)、 彫漆などの専門用語に、今日ショーウィンドウを眺めたぐらいでは到底漆芸を説明することなどできないことがはっきりとわかった。

今日得た知識。
・漆はウルシノキの樹液由来
・テレピン油は、松科植物の松脂などからできる精油
・テレピン油は漆の希釈用の溶剤・道具の洗浄に使う
・生漆(きうるし):漆の樹液をろ過して木の皮などの取り除いたもの
・透[すき]漆:生漆を精製したもの(透明な飴色)
・黒漆:精製作業において鉄粉をまぜ、酸化作用により漆を黒くしたもの
                                                                                        [参考:漆器の井助HP]

(余談だが、この商店の前であまりにまじまじとショーウィンドウを覗いていたので、宗教の勧誘(「アンケートに答えていただけませんか」という形式)に引っかかってしまった。「3、4分ほどお時間あれば」という声がけに、時間がないふりができなかった。)

■山口忠兵衛商店(手芸総合卸売り販売店)@東洞院松原
今日、散歩をしていて店内に入ったのはここだけ。手芸用品の品揃えが豊富で、とてもよいお店を見つけたと嬉しくなった(後から卸売のお店なのだと知った)。

山口忠兵衛商店
山口忠兵衛商店のウィンドウに花を添えるキューピー 

ちょうどウォンバットの刺繍マスコットを作っていて、立体感が出る感じに仕上げたいなと思っていたところだった。参考にしている刺繍作家・神尾茉利さんが、フクロウを作っている際に毛糸を用いていたことを思い出して、極細の毛糸がないか店員さんに聞いてみた。すると、タペストリー刺繍糸というものがあることを教えて下さった。嬉しく、タペストリー刺繍糸と専用針を購入した。

タペストリー刺繍糸と専用刺繍針

ちなみに、入店しなかったのだが山口忠兵衛商店の斜め向かいには毛糸屋さんもあった。窓からも、ものすごい種類の毛糸が並んでいることがわかった。私は編み物はど素人なので行く機会がなさそうだが、編み物をする人を案内したら喜ばれそうだなあと思った。

毛糸屋さん 金の羊

■因幡薬師(因幡堂平等寺)

因幡薬師(松原通からの景色)

松原橋からずんずん松原通りを西に歩いてくると因幡薬師(因幡堂平等寺)に至る。ここまで静かな松原通だったが、一転、たくさんの人がいた。がん封じ、病気平癒のお寺ということで、お参りに来る人が多いのだろう。

因幡堂縁起(重文)によれば、997年に橘行平が因幡国での任を終え、帰洛の途中に病に倒れ、平癒を願っているところ夢のお告げがあり、そのお告げに導かれて海中から薬師如来を引き上げたとのこと。その薬師如来を祭ったのがことの始まりだそうだ(その後の経緯は因幡堂HPに詳しい)。

因幡薬師 正門

ここまで来ると、烏丸通は目と鼻の先。人混みと行き交う車の喧騒に包まれた街の空気が色濃くなる。

ひとつ満足の吐息をついて、浪費することも過食することもなく、四条烏丸から電車に乗って帰宅した。

さあ、明日からまた、やってみよう。

<To Do>
・投稿論文1:修正(12月31日〆切→1月31日〆切 ※エディター判断)
・投稿論文2:修正(1月31日〆切)
・ゼミ発表:12月22日
・システマティック・レビュー:二次チェック中
・博論本文:
 3月31日?(予備審査委員会立ち上げ願い)
  5月予備審査?
  7月口頭試問?


この記事が参加している募集

#散歩日記

9,915件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?