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めざせ舞台女優!「かげきしょうじょ」の魅力

斉木久美子さん原作の漫画「かげきしょうじょ」。
アニメ化、舞台化もされたこの作品の魅力について書こうと思う。

主人公、渡辺さらさは紅華歌劇団(モデルは宝塚歌劇団)のトップスターを目指す少女。
身長178㎝というスタイルに恵まれたさらさが目指すのはもちろん男役だ。
「男役」というとかっこいいイメージだけど、さらさはふわふわした天然ちゃん。
そしてもうひとつ魅力的な設定がある。
さらさは歌舞伎の天才なのだ。

さらさの才能は幼少期に開花する。
「男に生まれていれば歌舞伎役者になって助六を演じることができたはず……」
周囲の大人はさらさが女の子であることを惜しがった。
ところがさらさは「女だから歌舞伎役者になれない」なんてことは知らない。
幼馴染で歌舞伎役者を志す暁也(あきや)くんよりずっと上手い。
「いつか助六になれる」。さらさはそう信じていた。
ところが「女は歌舞伎役者になれない」という真実を知る日が来る。
たとえ暁也より才能や実力があっても、さらさは「女だから」歌舞伎役者にはなれない。

この作品のいいところは「男女差別反対! 女だから歌舞伎役者になれないなんておかしい! 私は天才なのに! 男より私の方ができるのに!」などとさらさが言い出さないところだ。
さらさは「女であること」を受け入れ、「女だから歌舞伎役者になれない」ことに傷つきながら、たくましく己の道を切り開いていく。
打ちのめされた過去さえ芸にいかしていくのだ。

「助六になる」夢を断念したさらさが目指すもの。
それが、紅華歌劇団の「オスカル」だった。
歌舞伎役者のトップを目指す夢を紅華歌劇団のトップを目指すことに変更。
さらさは歌舞伎の才能をいかし、紅華のトップスターを目指す!

さらさの成長物語、そしてさらさと暁也の互いに対する複雑な心境や関係性が物語の軸となる。
さらさは簡単には歌舞伎への思いを切り捨てることはできないし、
「男だから」歌舞伎役者を目指せる暁也の心には、常に天才歌舞伎少女さらさの影がちらつく。

また、さらさの同級生たちもそれぞれに魅力的だ。

★奈良田愛
女優の娘で元アイドル。
ファンに暴言を吐いたことで強制的に引退、紅華音楽学校に入学してきた。
初めはさらさとの交流を拒絶していたが徐々に心を開いていく。
愛ちゃんが心を開いた時のさらさの台詞、
「片思いでもいいと思ってた」に涙をさそわれる。
さらさが男役トップスターになったら相手の娘役を演じてほしい。
代役で男役を演じたのをきっかけに男役への適正に気付き、
男役か? 娘役か? と逡巡する姿も惹きつけられる。

★杉本紗和
男役志望。
紅華音楽学校にトップ合格した。
バレエのコンクールに入賞していたりバレエ留学の話が来るほどの実力者。
しかしバレリーナではなく紅華女優を志す。
何かドラマがあったはずだ。
成績最下位のさらさをライバル視している。

★星野薫
祖母と母が紅華女優だったというサラブレッド。
祖母も母も娘役だったが、本人は男役を志望している。
「コネで合格」と言われているが、実際は受験に失敗し続け、
最後のチャンスをつかんで最年長で合格を果たした。
人一倍高いプロ意識を持つ努力家。

★沢田千夏・沢田千秋
双子で紅華女優を目指している。
二人ともジュリエットが大好き。
しかし1度目の受験で合格したのは妹の千秋だけ。
落ち込んだ千夏のために千秋は合格を蹴り、もう一度受験しなおした。
翌年、二人で紅華音楽学校に合格する。
しかしジュリエットの座はひとつしかない。

★山田彩子
一般家庭の普通の女の子。
さらさとは最下位争いをする。
「やっぱり普通の女の子では紅華女優にはなれないのだ」と苦悩しながらも努力する姿が胸に迫る。
歌が得意で紅華音楽学校の入学試験に合格できた。
誰かと比べて「できない」と落ち込んでいたのが、自分も「特別なひとり」なのだと気付く成長が涙ぐましい。

という感じで、同期だけでも応援したくなるキャラクターがたくさんいる。

さて、さらさはなぜ成績最下位なのに紅華音楽学校に入学できたのか?
それはさらさの歌舞伎の才能に秘密がある。
歌舞伎は先代の芸をコピーすることで伝統を引き継ぐ。
さらさはこの「コピー」が驚異的に得意であり、一度見た演技は完璧に真似できる。
ところが先生には「自分のカラーが出せなければトップにはなれない」と言われている。
さらさは才能を越えて独自のカラーを獲得できるのか?

「この子たちの舞台を観てみたい」と思うようなストーリーになっている。
さらさがオスカルを演じる場面も観たいし、同級生たちがスターになるところも観たい。

ちなみに私が一番ひいきにしているのは星野薫だ。
祖母はトップ娘役、母も娘役、それでも自分は男役になるんだという意志の強さがかっこいい。
逆境でも諦めない心を持つ星野薫は、フィクションの人間であることを忘れて応援したくなる。
こういう魅力的な人物を自分で書けるようになるといいな……。

アニメ版は各回のエンディングテーマが素敵なので必見。
この文字数では語りつくせない魅力あふれる作品だ。

ちなみに私の贔屓は星野薫。
二次創作小説を書いたのでそちらもチェックしてもらえたら嬉しい!
【短編小説】男役をめざす高3の夏|青野晶 (note.com)

アニメ版。
原作漫画。

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